小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2020が出ましたね。
前回が2017でしたので、3年ぶりの改訂です。
3年前に2017が出たときも、何が変わったのかについてブログに書きました。
2020のガイドラインを読んで思ったのは、「変更」というよりも「追加」という印象でした。
クリニカルクエスチョンが増えたり、フローチャートが増えたり、より分かりやすくなったという印象です。
今回は、小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2020の追加要素をピックアップしたいな、と思います。
小児喘息にダニアレルゲン特異的免疫療法が提案された
ハウスダスト・ダニによるアレルギー性鼻炎に対して有効であるダニアレルゲン特異的免疫療法。
私は以前に、アジアにおける舌下免疫療法の有効性をブログに書きました。
1～2年の舌下免疫療法で、鼻炎の85～100％で改善がみられ、喘息の76～92％で改善がみられました。
喘息にも有効性があるため、今回の2020ガイドラインで「ダニに感作された小児喘息患者にダニアレルゲン特異的免疫療法を標準治療とすることが提案される」と記載されました。
ただし、この特異的免疫療法は、通常はアレルギー性鼻炎に対して実施されます。
(皮下免疫療法は喘息に対しても保険適用がありますが、舌下免疫療法はアレルギー性鼻炎にのみ保険適用です)
つまり現時点の保険診療では、鼻炎を合併している喘息に対して舌下免疫療法が可能です。
喘息発作に対するステロイドの種類に優劣はない
A Randomized Trial of Single-Dose Oral Dexamethasone Versus Multidose Prednisolone for Acute Exacerbations of Asthma in Children Who Attend the Emergency Department. Ann Emerg Med. 2016 May;67(5):593-601.e3.
喘息発作を起こしている2-16 歳児に経口デキサメタゾン(0.3mg/kg 単回投与)またはプレドニゾロン(1mg/kg/日、3 日間)を投与し、第4病日の喘息の重症度を比較した論文です。
この論文の考察は、こちらの記事に書きました。
結論として、「プレドニゾロンかデキサメタゾンでは効果は同じ」とまとめました。
今回の2020ガイドラインでも「急性増悪(発作)時に特定の経口ステロイド薬の使用法は提案されない」と記載されています。
小児のウイルス感染による喘鳴にモンテルカストを投与しないことが提案された
感染に伴う一過性喘鳴にロイコトリエン受容体拮抗薬(モンテルカストやプランルカスト。商品名ではキプレス、シングレア、オノン)が有効かどうかは、私もずっと悩んでいました。
3年以上前の記事ですが、その悩みをつづりました。
また、当院の初期研修医からも同様の質問が多く、小児科ベストクエスチョンにもBEST32で登場しました。
モンテルカストは一過性喘鳴には無効である。
根拠は乏しいが、RSウイルス感染後の一過性喘鳴に対してモンテルカストを投与しないことを弱く提案する。
研修医の正答率 25％研修医24人が選ぶ 小児科ベストクエスチョン p221-226
今回の2020ガイドラインでも「小児のウイルス感染による喘鳴の治療としてロイコトリエン受容体拮抗薬を投与しないことが提案される」と記載されています。
同じコクランレビューを読んでいるわけなので、同じ結論になるのは当然なんでしょうけど。
ただ、蛇足ではあるのですが、私はアトピー素因がある患者さんが一過性喘鳴をきたしたときには、ロイコトリエン受容体拮抗薬を処方することがあります。
上記のコクランレビューの参考文献の一つ、Bacharierの研究では、喘息予測インデックス(API)が陽性である子どもには、モンテルカストがよく効いたと報告しているためです。
その他
冒頭にクリニカルクエスチョンがあるだけでなく、本文中にも適宜繰り返され、非常に教育的なガイドラインになりました。
書籍を買えば、WEBでも参照できるようになったので、いつでもどこでも見ることができる点も好印象です。
あとはもう少しお値段が……というところでしょうか。(ガイドライン2017は税抜き4200円でしたが、今回は税抜き7000円)
それでも、WEB版も同時購入したと思えば、お買い得なのかもしれません。
Source: 笑顔が好き。
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