不眠症というと、おとなの病気と思うかもしれません。
ですが、子どもの診療でも「夜眠れない」という訴えにときどき遭遇します。
幼児・小学生・中学生であっても、睡眠トラブルはあります。
睡眠不足が学力低下や肥満のリスクとなることが知られています。
そのため、睡眠トラブルは適切に対処したいところです。
ですが、子どもの睡眠不足に対してどのようなアプローチをすればいいのか、私の中でまとまっていません。
本日、子どもの睡眠トラブルについて、福島県立医科大学の横山先生のオンライン講演で勉強させて頂きました。
「子どもの睡眠を考える-神経発達診療の現場から-」という内容です。
講演会を通じて思ったことを自分の振り返り用として、残します。
まずメディアコントロールと早寝・早起きの習慣を
横山先生は「小学校に入るまでにできてほしいこと」というリーフレットを配布しています。
ポイントは次の4点です。
- 早寝・早起き・朝ごはん
- 返事、挨拶、靴をそろえて脱ぐ
- お手伝い
- メディアコントロール
睡眠に関するのは、早寝・早起きとメディアコントロールです。
メディアとはテレビやスマートフォンなどの光る媒体を指します。
メディアに触れる時間が長いほど、寝る時間が遅くなる傾向があります。
また、夜に強い光を浴びてしまうと、睡眠障害が起きると横山先生は話していました。
メディア自体が強い光を放つので、夜のメディアは避けるべきという内容でした。
横山先生自身の「部屋の電気が明るすぎて不眠症になったが、5本あった蛍光灯のうち4つ外したら眠れるようになった」という経験談が面白かったです。
逆に、午前中に光を浴びたほうがよく、カーテンを少し開けて眠るというのも良いと話していました。
これらは、ノーベルファーマの「よい睡眠をとるための生活習慣」にもあります。
余談ですが、「お手伝い」についての横山先生の考え方も興味深かったです。
曰く、お手伝いをするようになると、さまざまな段取りが分かるようになり、筋道を立てて物事を考えられるようになって、学力が向上するとのことです。
他にも、返事や挨拶などの生活習慣の改善は、神経発達予後の改善に繋がる、という考えについても話されていました。
子どもには意外に多くの睡眠時間が必要
National Sleep Foundationという機関の推奨は以下です。
- 3-5歳では10-13時間の睡眠が必要
- 6-13歳では9-11時間の睡眠が必要
- 14-17歳では8-10時間の睡眠が必要
意外と長い睡眠時間が必要です。
睡眠不足が学力低下や肥満のリスクとなることが知られていますが、腹痛や頭痛の原因になっていることもあります。
上記の睡眠時間を下回る場合は、睡眠障害の可能性についても考えなければなりません。
睡眠の改善に伴い、これらの不定愁訴も改善することがあります。
起立性調節障害との違いも、睡眠時間がポイントとのことでした。
睡眠時間が少ないのであれば、起立性調節障害ではなく、睡眠障害かもしれません。
睡眠障害の種類
睡眠障害にはいくつかの型があります。
- 入眠障害型
- 途中覚醒型
- 慨日リズム障害型
入眠障害型は、環境が関連する外因型と、環境が関連しない内因型とに分かれます。
外因型ではメディアコントロールが重要です。
内因型はメラトニン製剤などの薬物がより有効です。
横山先生の話で興味深かったのは、内因型では子ども本人が夜眠れないことでとても困っているが、外因型では子ども本人があまり困っていないことが多いということでした。
途中覚醒型は、気分障害が併存する可能性に注意すべきということでした。
概日リズム障害型はメラトニン製剤が有効ではあるが、1-2か月では治らないこともあり、根気が必要とのことでした。
薬物治療と効果判定
メラトニン製剤は、最初の1か月ほどは日中の眠気こともあるが、睡眠周期が改善すれば眠気はとれてくることあるということや、半年から1年ほど続けて漸減中止しやすいことなど経験談を示されました。
睡眠障害の効果判定には、睡眠票が有効です。
睡眠票とは、毎日何時に寝て、何時に起きたか、という記録です。
喘息日記や頭痛日記でもそうですが、症状が長期に続く疾患では、日々を記録し、症状の変化を振り返れるようにしておくことが大切だと感じました。
感想
ポイントはメディアコントロールなんだろうと感じました。
でも、「夜にスマホは触らないでね」と子どもに説明しても、あまり効果は出ないですよね。
私の持論ですが、親がずっとスマホを触っていれば、子どもは不公平に感じると思います。
家族内でルールを決めるとき、子どもにだけルールを押し付けずに、親もルールを持つべきでしょう。
しかし、いくらルールを設けても、メディアコントロールは簡単ではありません。
メディアコントロールの難しさが、睡眠障害診療の難しさに直結しています。
Source: 笑顔が好き。
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