インスリン抵抗性を考えてみました[11完] HOMAよりも役に立つ指標

健康法

ここまで,インスリン抵抗性とは何か,それはどうやって測定されるのか,そしてインスリン抵抗性の指標としてよく使われているHOMA指標を考えてきました.

HOMAのまとめ

インスリン抵抗性を本当に実測しようとすれば,ちょっと怖いクランプ試験しかありません.
しかし,クランプ試験は 実際には糖尿病診察に使えるものではないので,クランプ試験と『よく相関する』 HOMA が考案されました. さらに HOMAの精度を高めた HOMA2 も提案され,海外ではよく用いられています.
ただし日本では,HOMAをさらに簡略化した HOMA簡便式が一般的です.

しかし,HOMAにせよ HOMA2にせよ,さらにHOMA簡易計算式にせよ,それらは クランプ試験数値を推定するための指標にすぎません. またこれらはすべて推定法ですから,当然存在するであろう個人差は いっさい無視しています.

ネット情報や,あるいは医学書などでも,HOMA数値を微に入り細にわたって詳細に議論しているのをみかけることがありますが,そこまで細かい話をしてもあまり意味はないと思います. 指標は指標にすぎないのですから.

遠い親戚より近くの他人

急に助けが必要になった時,遠い親戚よりは お隣さんの方がよほど頼りがいがあります.
同様に HOMAがインスリン抵抗性のよい指標だとしても,それには空腹時の血糖値とインスリン値が必要です. 糖尿病で定期通院されている方であっても,毎回 空腹時インスリンを測ってもらえるわけではないでしょう.せいぜい年に1,2回だと思います.つまり 自分のインスリン抵抗性の変化を知る機会は年に1,2回しかありません.

もっと 気軽に手っ取り早く インスリン抵抗性を見積もれる指標はないのでしょうか?
それがあるのです.

TG/HDL比でも判定できます.

定期通院していれば,その都度採血検査するので,ほぼ確実に中性脂肪(TG),コレステロール(HDL,LDL)などは検査してくれます.このTGHDLの比(= TG/HDL比)は,インスリン抵抗性とよく相関しています.
TG/HDL比は,日本でも欧米でも心疾患リスクと高い相関を示すことはよく知られていますが,インスリン抵抗性のよい指標でもあるのです.

TG/HDL比とインスリン抵抗性との相関性

中国で,あらたに糖尿病と診断された 平均年齢 54-56歳の560人(男性:272人,女性:288人)を調べたものです.

一般に TGが高いほど,また HDLが低いほど HOMA-Rが大きい,つまりインスリン抵抗性が高いことは知られていますが,それらよりも 更に TG/HDL比で見た方が感度・特異性が良好であったという報告です.

上の図は,TG単独,HDL単独,及びTG/HDL比のインスリン抵抗性に対するROC図です.TG/HDL比が大きいほど,感度[縦軸]は大きく,特異度も高いです.(横軸は [1-特異度]なので,左にいくほど特異度が高い) このことは,TG/HDL比の変化が,最も敏感[感度]かつ正確に[特異度],インスリン抵抗性の変化に応答することを意味しています.

ROCについては,この記事を参照してください.

いくら糖尿病学会が『食の欧米化による脂質摂取増加が糖尿病の原因です』と主張しても,あるいは 健康雑誌に『ナントカで血糖値がストンと落ちます』と書いてあっても,それが本当かどうか自分自身の数値結果で確認できないのでは意味がありません.

たしかに TG/HDL比では,インスリン抵抗性の『数値』はわかりません. しかし,悪化しているのか/改善しているのか,その傾向はわかります. 数値の絶対値よりも,傾向の良否が分かる方が,それも年に1回ではなく,年に数回もチェックできる,この方がよほど役に立つのではないでしょうか? 単純に 自分の TG/HDL比の変化をグラフにすればいいだけなのですから.

インスリン抵抗性を考えてみました【11完】

Source: しらねのぞるばの暴言ブログ

コメント

タイトルとURLをコピーしました