来年の10月に消費税が10%に引き上げられるのですが、今日はこのことが医療機関にどう影響するかを考えてみました。
保険診療での患者さんの支払いは非課税
問題の根源はここにあります。保険診療である限り、診療を受けた患者さんが支払う金額には消費税が含まれません、医療費は非課税対象です。一方で、運営に必要な経費は、給与を除くと、賃料や消耗品、薬剤など大半のものには消費税がかかります。また、診療報酬は、すべて決まり事に従って、決まった額を請求するしかなく、診療時間がかかりすぎたから3割増しね!というようなことはできません。
一般の方には「医療費なんだから非課税が当たり前だろ?」とか「もうけているんだからいいでしょ?」みたいな感情的な意見の方もいますが、現実には大半の公的病院は赤字、無床のクリニックと言っても、無理をすれば破産に追い込まれるものも少なくない現状では、無条件で何パーセントも経費のみ上がる状況を許容できないため、この差額を診療報酬を上げてもらって、補填してもらう必要があります。
診療報酬改定分では補填不足
一応、消費税増税の分を補填する形での診療報酬改定が行われてきましたが、端から見ても補填が不十分であり、実質マイナス改定と言われてきました。実際、7月25日に行われた『第16回 医療機関等における消費税負担に関する分科会』では、2016年の消費税率引き上げ(5%より8%)に対応した診療報酬改訂について答弁が行われましたが、病院収入の計算方法の算定に明らかなミスがあり、実際の補填率も85%にとどまってしまった、ということに関して強い非難が起きたとのことです。
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000337198.pdf より抜粋
ちなみに、診療所については補填率がえらく高く見えますが、これも現実の数字に近いでしょうかね…本当かなあ?
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消費税率引き上げ対策
私は経理や税務の専門家ではないので、あくまで思いついたことのみ書きますが、
なるべく派遣会社を使わず、自前で雇用する
ちらっと書きましたが、自分のところの職員に払う給料には消費税がつきません。一方、派遣会社からの人を使う場合、派遣料には消費税が上乗せされるので、年間500万円を派遣社員に払うとなると、消費税が10%なら、50万円損することになります。
まあ、正規職員を雇用する際のコストや、ローテーションなどの関係で派遣の方が都合がいい場合もありますので、一概に言えないですけど、派遣会社や仲介業者を使わず、その分多少条件をよくして、いい人に入職してもらうのが理想でしょう。
医療機器を今のうちに買う
高額な医療機器は、即金で購入するのが難しく、リースを組みたくなりますが、借金をしてそのときに購入すると、購入時の消費税率でまとめて払う形になります。
リースにすると、償却するまでに支払うリース料は借金した場合とほぼ同じ額になりますが、再リースの際にはそのときの消費税率で、リース料に上乗せされますので、少なくともその分は損になります。
関係団体の提言
8月29日に、日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会、四病院団体協議会が合同で、「控除対象外消費税問題解消のための新たな税制上の仕組みについての提言」を行いました。概要の部分だけ引用いたしますが、
ん~、申告制にして差額分を返してもらうってことなんでしょうけど、実際問題難しそうな気がしますね。実際自費診療と保険診療の両方にまたがる仕入れなどもあって、扱いをどうするのかとか、ちょっと考えてしまいますが。
まとめ
そもそも財務省などは、診療報酬改定のたびにマイナス改定を主張しますし、一般世論は強いデフレ志向があるので、取り巻く環境は難しいです。近年の医療費の増加の要因の中で一番大きなものは、高齢化社会と思われますが、政権側は有権者に忖度して、負担を増やすなどマイナスイメージにつながる政策を打ち出せず、ごまかしてきた結果が今の状況です。
少なくとも、消費税引き上げに際しては、必要経費的に支払った消費税分について、十分補填できるような対応をしていただきたいと思います。
Source: 医者向けのちょっといい情報
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