計算が合わない
技術の進歩により,一人の人のすべての遺伝情報を余すことなく全解析することが,安価に しかも 短時間で行えるようになって,『糖尿病に関連する遺伝子』の発見が続々と報告されるようになりました.
しかし,それらの遺伝子の『遺伝力(遺伝率)』は貧弱なものでした. どの遺伝子も,『その遺伝子を持っているだけで必ず発症する』というMODY(Maturity Onset Diabetes of the Young;家族性若年糖尿病)遺伝子ほどの遺伝力はなかったのです.
2017年にハーバード大学の J.C. Florez博士が,その時点で報告されていた90個の『2型糖尿病に関連する遺伝子』を精査してみたところ,
それらの遺伝子によって 糖尿病発症にいたるリスクはどれも小さくて(=最も有名な TC7FL2でもオッズ比が1.5以下★),これでは糖尿病を発症する確率をせいぜい 10%程度しか説明できなかったのです.
★右上の赤丸で囲んだ遺伝子は,少数民族・地域で見出されたもので,糖尿病発症オッズが例外的に高いですが,これらはどちらかといえば,遺伝子変異というよりは,遺伝子異常に近いものです.
それでも遺伝子全解析が開始された初期には,まだ楽観的でした. 現在はまだ糖尿病関連遺伝子が少数見つかっただけだが,その内 解明が進めば やがてすべてを説明できるだろうと. ところが 『糖尿病に関連する遺伝子』が 400近く発見された現在においても話は進んでいません.
な,ないっ!
双生児の遺伝学研究から得られた糖尿病の遺伝による支配率は30%, しかし遺伝子解析結果を積み上げても せいぜい10%しか説明できないのです.
いったい この差は どこへ行ったのでしょうか?
この差を説明するために,いろいろな理由が挙げられています.
次回以降はそれらを検証してみます
[7]に続く
Source: しらねのぞるばの暴言ブログ
コメント