第35回 管理栄養士国家試験[5完] 頭をかかえる教育機関

健康法

[アイキャッチ画像] (C) 猫島商会さん

今回の国家試験で,応用力を試す問題(第180-182問)に対して,試験直後に栄養専門学校などから発表された解答速報は, 182問の正答を (2)又は(4)とするものが多かったです.
しかし,一般的には好ましくないとされている『飽和脂肪酸を50%含むバター』を『好きなだけたっぷりと パンにぬってください』が,厚労省の示した正答 でした.

厚労省の意図

いくら豊富な知識を持っていても,それを活用できないのでは意味がありません.
単に知識の多寡,知識の正確な暗記を問うだけでなく,それを実際の複雑な局面で活用できるか,すなわち知識を臨機応変に応用できる能力を要求したのが,厚労省の狙いでした.

出題基準

この厚労省の考えがよくわかる資料があります.2018年9月~2019年1月に行われた『管理栄養士国家試験 出題基準(ガイドライン)改定検討会』です. これは いつでも誰でも閲覧できるよう,厚労省のHP で公開されています.

2019年以降,今後の 管理栄養士国家試験で,どのような基準で出題するかを多くの識者からなる委員[PDF] が検討したものです.

その議事録を見ると

簡単に言うと、世の中は変わってきていますので、これまでのように絶対解というか、正しい、間違っているという暗記問題だけではクリアできない問題がいろいろでてきているのだということで、論理的思考ができるということ、それと、きちんとそれをプレゼンテーションできる能力をこれから養っていく必要があるだろう

第1回 議事録 p.3

『こんなことは教科書には書いてなかった』そいういう場面に遭遇した時,自分の頭で考えて判断できる能力を求めるべきだという意見です.

最終報告書には

3回の検討会を重ねて,最終的に出された報告書にはこう書かれています.

特に、個人や集団の栄養に関する課題に対し、効果的・効率的に取り組んでいく上で必要とされる知識、思考・判断力を的確に評価することがますます重要になると考えられる。こうした観点から、応用力試験問題の更なる充実を引き続き検討していくことが望ましい。

報告書 p.3

この『応用力試験問題の更なる充実』を実行した結果が,今回の 第180~182問でした.

単純な『飽和脂肪酸=悪』という暗記知識では 必ず間違えるような問題にしたのです.

学会,特に管理栄養士が所属する『日本病態栄養学会』の症例報告などを聞いていると,

患者に食品交換表を教育指導したら HbA1cが平均 XX%下がった

などという報告を 毎年 多数みかけます.
しかし中には 栄養不足・栄養失調で血糖値まで下がってしまった高齢者もいるかもしれません. つまり『HbA1cだけを見て,介護老人を増やしているだけ』かもしれないのです.

学校で習った栄養学の教科書知識だけを頼りに,すべての患者に『理想の栄養指導』を無条件に押し付けようとする,そういう『マニュアル一辺倒の管理栄養士』を今後は排除していきたい,そうしないと高齢者の医療・介護予算は膨らむばかりだ,という厚労省の強い危機感を感じました.

今回 受験した学生に,厚労省のこの意図がどこまで伝わったかは疑問です.

しかし この出題は,管理栄養士を養成している教育機関には 下記のように 強い衝撃を与えたと思います.

  • 『知識を詰め込むだけの教育は これからは通用しない』
  • 『今後は,「いい食べ物」「悪い食べ物」という単純な教え方はできない』

第35回 管理栄養士国家試験[完]

Source: しらねのぞるばの暴言ブログ

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