虐 待。

その昔、“虐待”なんて言い方はしなかった

“親は子どもを殴って当たり前”だと思っていた

“子どもが悪いことをすると、
 親は躾のために殴るもの”――

そう思っていた

それが違うことだと気づいたのは、
たぶん私が大人になってから...

すでに幼少期から、
私は母に手をあげられていた

「あんたが悪いからだよ」
「あんたが謝らないからだよ」
「謝れば叩かないから、ちゃんと謝りなさい」
「これは“暴力”じゃない。“スパルタ”だからね」

朝、なかなか起きなければ、
平手が飛んできた

一発きれいに頬にヒットするまで、
抵抗する私の腕を振りほどきながら
執拗に叩かれた

「一発叩かせた方が、母の気が済む」と、
抵抗を諦めたこともあった

“お仕置き”として靴下のまま外に出され、
玄関の鍵をかけられ
家に入れてもらえないことも、

物置きに閉じ込められ外から鍵をかけられて、
出してもらえないことも幾度もあった

それは、私が悪いことをしたから

素直に謝らなかったから

それが、“躾”であり“教育”だと思っていた

  まぁ、謝ったところで、
  結局、ビンタは食らうのだが...

  子どもながらに謝らなかったのは、
  「お母さんが悪い」という、
  そんな反抗心があったのかもしれない

母に言わせれば、それが“厳しい躾”

手をあげる母親の、
セオリー通りの“自分への言い訳”だ

そして何かと、

「うちは過保護だ。甘やかしすぎだ」

と言っていた

『こんなに殴られているのに、
 これでも甘やかされてるの?
 褒めてもらったこともないのに、過保護?
 抱きしめてもらったこともないのに、
 甘やかしすぎ?」

と、子どもながらに疑問に感じていた

私には4つ違いの妹がいる

私が中学生になった頃だっただろうか

「あんたもお母さんに殴られてるの?」

と、聞いたことがある

「ないよ」――

妹も私同様、
口うるさい父のことを嫌ってはいたが...

  父も言葉の暴力を使う人だった

母が妹に手をあげていなかったことに驚いた

『なぜ、私だけ...』

“暴力”を“躾”であると、正当化しようとしていた母

それは、虐待をする親にありがちな感情らしい

あの当時、“虐待”という言葉があったら、
母はどうしていただろう

それでも殴ったのだろうか

  たぶん、殴られてるな...

その母が一度だけ、
「あんたに悪いことをした」と、吐露したことがある

「あんた、覚えてる?
 お母さん、あんたのお尻、
 火箸でめちゃくちゃ叩いたことがあって。
 気になってあとで見てみたら、
 お尻が真っ青になっていて・・・。
 あのときはさすがに
 “悪いことをした”と思った」

私が30代のときの、母の初めての懺悔だ

当時、おそらく私は3歳くらい

当然のことながら、
私の記憶には、その欠片もない

“火箸”といえば、鉄製だろう

そういえば私が生まれた頃、
冬の暖房は石炭を使っていたと聞いたことがある

「反省はそれだけか...」と、そのとき思った

「幼い子どもに、そこまでするのか...」

そう思った

身体的虐待のほかにも、
母の言葉にも傷ついてきた

たとえば、

「あんたなんか産まなきゃよかった」
「あんたの育て方、間違った」
「あんたなんか、
 どうせ何やっても駄目なんだから」

...などである

『虐待を受けて育った子は、
 自分の子どもにも虐待をする』

と、聞いたことがある

私が乳がんになったとき、
“子どもが産めなくなる”と知ったとき、

「これで私は自分の子に手をあげなくて済む」

と、思ったこともある

が、自分が叩かれて、心も身体も痛かった分、
傷ついてきた分、
親の愛情に飢えていた分、

「自分の子どもには、
 絶対私と同じ思いはさせない」

とも思っていた

私の幼い頃からの夢は、
“温かい家庭をつくること”だったから

最近、思うときがある

幼少期の頃から長い間受けてきた、
“親”というストレス

「だから乳がんになったのかな...」

と...

いや、もちろん、
これだけが原因ではないだろうが...

母が亡くなって、6年になろうとしている

母が亡くなって、
その呪縛から逃れられると思っていた

が、一段と強くなっていくのはなぜだろう

わだかまりがわだかまりのまま、
行き場を失っているのかもしれない――

  これだけ聞けば、
  “凶暴なだけの母”だと思われるかもしれない

  が、“もちろん母らしいところもあった”と、
  つけ加えておこう

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Source: りかこの乳がん体験記

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