病院からご自宅に帰られる時、
よくこんなことをおっしゃられる方が多い。
病院での、
治療食や嚥下食の取り組みには、
日々頭の下がる思いである。
そこに関わられる多くの方の努力で改善を重ね、
今があることは理解している。
それでも、やっぱり、
「好きなもん食べて、死ぬんやったら本望や!
わかってえな、センセ、頼むわ。」
こうおっしゃられる方は、たまにおられる。
そんな時、退院時の初回訪問は、
いつも以上に集中する。
そして、決まって、
狙ってゲリラ訪問にする。
退院直後の食事場面を狙っていく。
食べる場所、姿勢、テーブル、椅子、
食べるもの、飲み物、お皿や食具、
テレビの位置や冷蔵庫の中、
台所の片付け具合、等々。
そして、一番集中するのは、
食べ物の一塊の量、形態、
食べるスピード、嚥下の速さ、
飲み込みまでの時間、等々。
摂食嚥下に関する全てを観察する。
それも、さり気なく、楽しい雰囲気で。
病院からのバトンは、
絶対に落とすわけにはいかない。
だからこそ、
この一回の初回訪問に、
全身全霊を傾ける。
食べることは生きること。
生きることは食べること。
今日は、大丈夫!
絶対に最期まで食べられる。と確信した。
魔法瓶に入れたビールで、
乾杯された後、彼は、
「これが世界で一番うまい飲みもんや。」
口の中に含み飲み込むタイミングも抜群で、
飲んだ後の笑顔は、世界一でした。
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Source: 兵庫県三田市の在宅療養支援診療所「たなかホームケアクリニック」
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