2019年5月22にからテレビ朝日系列で5夜連続で放映される医療ドラマ・白い巨塔のキャストが発表されました。
2003年フジテレビ放送され、高視聴率をたたき出した連続ドラマが放送されて以来となります。
今回のキャストについて、医師の視点から考察してみたいと思います。
総評
2003年にフジテレビで放映されたドラマ・白い巨塔と同様に、今回も非常に豪華なキャストが揃いました。
5夜連続放送予定とのことですから、テレビ朝日側の力の入れようも伝わってきます。
全体のキャストを見渡すと、「キャストが全体的に若い」と言えそうです。
そもそも俳優・女優は実年齢よりも若く見えることがほとんどでしょうから、ドラマとなった場合は実世界の年齢性よりもかなり若く見えてしまうことでしょう。
このドラマでは浪速大学の教授選を舞台にした、大学病院内の人間模様がテーマです。
教授選に出馬するのは本来40-50代の医師な訳で、当然のことながらキャストの主体もそうあるべきなのですが、実際はそれよりもかなり若くなっています。
このような背景が実際のドラマにどう反映されるのかは、視聴してみないことにはわかりませんが、一視聴者としてはドラマが成功することを願うばかりです。
主要キャスト考察
財前五郎(ざいぜん・ごろう)……… 岡田准一
まず教授就任を目指す浪速大学第一外科の准教授には岡田准一がキャステイングされました。
岡田さんは実年齢38歳らしいですから、教授選に立候補する年齢としてはやや若すぎる印象もします。
ドラマで描かれる浪速大学とは、現実世界で言うところの大阪大学に当たります。
どこの大学でも第一外科は医学部の中でも最もメジャーな診療科の1つであり、さらに大阪大学ともなれば、まさに日本を代表する医学部の教授となります。
通常教授選に出馬し教授になろうとする医師は、どんなに若くても40代前半であることが多いでしょうか。まして名門浪速大学ですから、30代の教授選出馬はちょっと早すぎる気がします。
とはいうものの、2003年のフジテレビドラマでは当時38歳の唐沢寿明が演じており、終わってみればぴったりの配役でした。
意外と良い感じになるかもしれません。
里見脩二(さとみ・しゅうじ)……… 松山ケンイチ
浪速大学第一内科の准教授である里見役には、松山ケンイチが選ばれました。
ん〜これも若すぎますね。松山君は実年齢34歳とのことですから、現実世界ではありえないことです。
浪速大学の第一内科ともなれば、第一外科と同じように医学部の中でも花形の診療科になります。
残念ながら今の高度に発達した医療レベルだと、臨床医が34歳で准教授になるのはまず不可能です。
ほとんどの大学、特に名門とされる医学部では、34歳だとせいぜいヒラの医員かよくて助教、かなり優秀な人材でも講師くらいでしょう。
34歳で准教授は戦前の医学部のはなしですね。
患者に一途、出世を望まない役柄としては松山ケンイチ君のキャスティングも悪くはないと思いますが、こちらも同様に40代前半の俳優を起用して欲しかったと思います。
西島秀俊、安田顕あたりの中堅俳優で全く問題なかったのではないかと思うのです。
花森ケイ子(はなもり・けいこ)……… 沢尻エリカ
財前の愛人であるケイ子役には沢尻エリカが選ばれました。
2003年のフジテレビverでは黒木瞳が演じている役ですから、その存在感を超えていくのは難しいでしょうね。
ただ彼女のイメージはホステス、愛人にはかなり近い部分がありますし、年齢的には30代〜40代どこでもいけますから、初めて「まあ良いんじゃない?」といえるキャスティングの気がします。
ちなみに彼女も医大卒業の設定なので、頭脳明晰なのであります。
東貞蔵(あずま・ていぞう)……… 寺尾聰
こちらは名門第一外科の教授役となります。寺尾聡の年齢は71歳だそうです…これじゃあ名誉教授の年齢です。
国立大学の教授の定年は、いろいろ前後しますがだいたい62-65歳くらいとなります。71歳だとちょっと年齢が高すぎる気もしますね…
ただ俳優陣の年齢を62-65歳にもってくると、どうしても若すぎる印象が出てきますから、退官する教授、寂しい教授を演出するにはこれくらいの年齢の方が良いのかもしれません。
それに小説・ドラマで描かれる東教授は、教授でありながら財前の突き上げに動揺するどこか頼りない存在でもありますから、これを60代の俳優が演じきるのは難しいでしょうね。
実際にドラマをみて判断することになるでしょうか。
鵜飼裕次(うがい・ゆうじ)……… 松重豊
また主人公の財前五郎と教授選の駆け引きを行う重要な役割である、第一内科の教授にして医学部長には松重豊がキャステイングされました。
まぁ悪くはないなぁと思うのですが、寺尾聡が71歳で松重豊が56歳です。二人並んだ時は大丈夫でしょうか。
さて大阪大学は医学部長ともなれば、日本を代表する著名な医師の1人と言っても良いかと思います。
堂々と威厳あるイメージです。また病院長になる年齢となると、どこの大学病院でも60歳前後の教授であることが多いと思います。
そう考えてみると、松重豊のキャスティングはまずまず合格といって良いでしょうね。
大河内恒夫(おおこうち・つねお)……… 岸部一徳
ドラマの中で重要な役割を占める、病理学講座の教授には岸部一徳がキャスティングされました。
医療訴訟の対象となる患者の病理解剖を務め、財前とは対立する役柄です。
病理医は落ち着いて控えめ、重厚で頭脳明晰といったイメージです。岸部一徳は72歳ではありますが、役柄を考えると年齢的にも良いかと思います。
ただしん〜どうでしょう。医療ドラマで岸部一徳となるとドクターXしか思い浮かばない私からすると、大丈夫かな、という気はします。
ドクターXではどちらかというと、面白い、ふざけたキャラでしたからね。いきなり浪速大学の病理学教授のイメージになれるかどうかは、難しいところでしょう。
佃友弘(つくだ・ともひろ)……… 八嶋智人
浪速大学第一外科医局長の役柄には、八嶋智人がキャスティングされました。
医局長とは医局内の雑務を取り仕切る役回りで、ちょうど組織内の雑用をこなす役職になるでしょうか。
小説・ドラマの中ではずる賢く医局の統制を測る医師として描かれていますから、一般的な外科医のイメージよりは、どこか小回りのきく調整役のほうがぴったりでしょう。
その意味では八嶋智人のキャスティングもまずまずといったところでしょうか。
野坂奈津美(のさか・なつみ)……… 市川実日子
また脳外科の教授には市川実和子がキャスティングされました。
彼女の実年齢は40歳ですから、残念ながらこれは若すぎる、そして軽過ぎるキャスティングと言わざるをえません。
どうもテレビ朝日はドクターXのノリで医療ドラマを制作しているのか、出演者が若すぎます。
脳外科の医者と言うのは、よく言えば体育会系で公開公開、悪く言えば自己中心的で横暴な医師が多い印象です。
それに浪速大学の脳外科教授となれば、日本を代表する脳神経外科の一人ということになりますから、教授になるのは重厚感のあると、どっしりした人物と言うことになるでしょう。
その点で考えれば女性をキャスティングするのであれば、60手前のの風格ある女優さんを登用して欲しかったなぁと思います。
実年齢50代の浅野ゆう子とか、それこそ高島礼子でもよかったのではないかと思うのです。
財前又一(ざいぜん・またいち)……… 小林薫
マタニティクリニックの医師で、娘婿の教授選をバックアップする存在です。
前作では西田敏行が流暢な関西弁で勤め上げ、ハマり役でした。
なかなかハードルは高いですが、頑張ってもらいたいものです。
財前杏子(ざいぜん・きょうこ)……… 夏帆
財前五郎の妻には、夏帆がキャスティングされました。
夏帆さんは実年齢は27歳ですから、これはさすがに若すぎます。
まあ財前が魅力ある人物で、若い女性にもモテると考えるとこの年齢も許容範囲ではあるのですが、ちょっと無理がありますね。
教授選に出るような医師が20代の女性を妻にしていなんて、ほとんどないでしょう(といっても実例は知っていますが…)。
順当に考えるならば、菅野美穂、北川景子あたりのもうちょっと落ち着いた女優さんを登用しても良かったのではないかと思います。
小説・ドラマでは財前の愛人である花森ケイ子(沢尻エリカ)と対決するわけですが、ここを意識してのキャステイングだったのでしょうか?
2003年のフジテレビだと黒木瞳と若林麻由美の出演でしたから、随分若返ったものです。
東政子(あずま・まさこ)……… 高島礼子
第一外科の教授夫人には、高島礼子がキャスティングされました。
この夫人の役所としては、教授夫人であることに誇りを持ちつつも、夫の体感に伴ってその地盤が揺らぎながら、自らの境遇にあたふたするという難しい役所です。
寺尾聡が71歳、高島礼子が54歳ですから、年齢差を考えるとちょっと離れすぎな気はします…
2003年で夫人役を務めた、高畑敦子が2019年verでも夫人役でも良かったような気がします。
佐々木庸平(ささき・ようへい)……… 柳葉敏郎
さて、ドラマの中では医療訴訟の原因となる患者に、柳葉敏郎がキャスティングされました。
2003年のドラマでは、田山涼成が演じてしましたね。がんばってもらいたいものです。
ドラマ成功の鍵
このドラマの成否を握っているのは、果たして大学病院内の人間関係がうまく描かれるかどうか、ということでしょうか。
個人的には2003年にフジテレビで放映された連続ドラマがあまりにも豪華キャストで制作費がかかっていため、これを超えていくのは難しいのではないか、と思っています。
ストーリーに関してはこれまで何度もドラマ化され、いずれも高評価を得ていますから、最終的に評価されるのは俳優陣・女優陣ということになるでしょう。
Source: 医者夫婦が語る日々のこと、医療のこと
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