最期のお布団

医療機関

しばらく一緒に寝てなかったの、私。

この人はお布団、私は膝が悪いからベッド。

 

お母さん、結婚して何年なん?

 

先生、2月で50年だったのよ。

この二人の写真見て、私すごく可愛らしいでしょ?!

 

50年前の結婚式、男前と美人。26歳と23歳。

 

お父さん男前ですやん。もうあとちょっとやし、

50年の感謝で、隣で寝てやってよ。

 

そうね、せっかく運んでもらったベッドで私が寝るわ。

お父さんは2階からこうして先生に降ろしてもらったお布団。

並んで、寝ます。本当にたくさん感謝です、、、

 

 

先週末、福祉用具屋さんに無理を言って、

緊急で入れたベッドは、どうしても馴染めなかったようだ。

 

お父さんは、いつも和室で、畳の上にお布団だったの。

 

お家の畳にお布団敷いて、

そこで死にたい彼の最期の望みを叶えるために、

彼の部屋のお布団を2階から降ろし

1階の畳の部屋に敷いた。先週搬入したベッドの隣に。

 

やっと、体動も減ってきて、眉間のシワも無くなってきた。

 

お布団どうです?

うんうんって確かに頷かれた。

 

徐々に始まる下顎呼吸。

 

どうしても、そこに居たい彼に彼女は、

50年の感謝を込めて、手を握って名前を読んだ。

 

名前を呼び、涙を流し、一生懸命に彼に声をかける。

その声を聴く彼の手はギュッと彼女の手を握り返す。

そうして、息が、ゆっくりゆっくり止まった。

 

 

彼と彼女の50年は、今日終わったのではない。

きっと、あの手の握りあった感触が、一生の宝物。

あの感触とともに、彼女の中で彼は生きていく。

 

あまりにも素敵だった。

 

 

このお手伝いにこだわっている。

オレらは人生をかけている。

あの日踏み外したレールの向こう側に、

オレたちは、まだまだあがいて挑戦する。

こんな苦しみなんて、大したことじゃない。

夢見てるんだ。つきものだ。

 

今日も、必死に藻掻いた。世の中そんな甘くない。

感謝・謙虚・笑顔だ。良かったら聴いてください。

 

 

 

 

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Source: 兵庫県三田市の在宅療養支援診療所「たなかホームケアクリニック」

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