誰に気兼ねすることなく、「がん」と口にできる日 ~第149回 がんサロン~

その他

+5.2℃の朝

まぁ、
この時期にしてはこんなもんか...

そして日中は25.3℃

相変わらず気温差が大きい街である

そんな今日は、月に一度の『がんサロン』

心に溜まった毒を吐き出す日である

今日ばかりは、
“がん患者”でいられる日

このときばかりは、「
がん」という言葉を
気兼ねなく口にできる日なのだ

サロン会場がある病院まで、
少しだけ急な坂がある

  私はその坂を勝手に、
  “心臓破りの坂”と呼んでいるのだが...

体力が落ち、体調が悪かった治療中は、
なかなか上ることができなかった

息を切らしながら、一歩一歩進んでいた

そんな今では、軽々と歩ける

過去の自分への、ちょっとした優越感だ

坂の先には、病院に続く公園がある

毎月ここを通るたび、
四季の移り変わりを感じられる癒しの場所だ

2022/05/18 がんサロン ①

新緑が眩しい...

2022/05/18 がんサロン ②

清々しい青い空...

2022/05/18 がんサロン ③

風にそよぐ木々の声...

2022/05/18 がんサロン ④

まだ5月だというのに、
すでに噴水が稼働している

水の音は、癒しだ...

幼い子どもたちが、
素足で無邪気に水と戯れる姿は
なんとも長閑である

世界で何があっても、
ここにある平和...

コロナが広がってから、
何度か中止を余儀なくされた『がんサロン』

参加者も減り、
以前来ていた人たちも、
今ではほとんど来ることはなくなってしまった

が、今日はいつになく参加者が多く、
久し振りに賑やかなサロンとなった

マスクを着用しての会話は、
表情もわからず、声も届きづらく、
なんとなく無機質な感じがする

それでもこうして開催してくれることは、
本当にありがたい

「月に一度、
 ここに来て話ができることが楽しみで...」

「普段は言えないことも、
 ここでは話せるから...」

そう口にするひとは多い

“日常”という生活の中で、
がん患者は様々な痛み、思いを
隠しているのだろう

がんは、今では、
“早期なら完治も可能”と言われるまでになった

それでも“再発”の不安がある

それでも“死”が頭を過ぎる

がん治療が進んでも、
患者の不安は
13年前となんにも変わらない

『がんサロン』ができた13年前と、
患者の思いは同じなのだ――

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Source: りかこの乳がん体験記

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