夢の休日,悪夢の現実

内科医

 先月の連休は,かみさんと車で香川に旅行してきました.
 徳島との県境近くにある「阿賛琴南(あさんことなみ)湯山荘」という,美しい里山に囲まれた別荘的な宿泊施設で,ホテルニューアワジグループが数年前にオープンしたものです.
 徒歩圏には特に大きな観光スポットもないので,自然の静寂の中で心ゆくまでステイそのものを楽しめる場所です.
 眼前に広がる山々の緑を楽しめる大きな露天風呂,味はもちろん目も楽しませる絶品料理,そして癒し系の優しい女性スタッフによる,100分もの全身マッサージと続き,部屋に帰った途端ふかふかのベッドで翌朝まで爆睡となりましたが(笑),極上のホスピタリティで日頃の疲れが癒され,心身共に安らげた一日となりました.

 さて,一旦落ち着いていたコロナ禍は,予想はしていたものの経済活動の回復と共に再燃し,第7波となってしまいました.

 今回の株は感染力が強くワクチン接種率の低い若年者を中心として感染が急拡大していますが,病原性は比較的弱いためほとんどのケースで数日間の発熱や咽頭痛のみで,症状だけでは通常の風邪とほとんど見分けがつきません.

 発熱外来に登録している当院もキャパを超えてしまいPCR検査のキットも不足気味となっているため検査希望者全員は受け入れられない状態です.

 陽性者が出るとその同居家族全員が濃厚接触者となり得るので,初期のころは全員に検査をしていましたが,今回の株は症状が出ればほぼ感染は間違いないため,家族などは敢えて検査せず「みなし陽性」として保健所への報告のみすることもあります.

 中には夫婦揃って発熱して市販の抗原キットで検査したら案の定陽性だったが,子供もおらず仕事もテレワークで済むのでそのまま10日間ほど自粛していた,という若い夫婦の例もありましたが,彼らを責めるわけには行きませんし,むしろ私はそれでいいと思っています.それにそんなケースは枚挙にいとまがないでしょう.

 マスコミは相も変わらず嬉々として毎日の感染者数を発表しては,先週より何人増えただの,過去最高だのと国民の不安を煽ることに余念がありませんが,実際の感染者数はその2倍,いや,3倍以上いるかもしれず,総感染者数など何の意味もありません.

 実は今の日本の感染者数は,すでにウィズコロナに方針転換した他国と比較しても遥かに多いとのこと,これだけ感染対策に神経質なのに不思議な気がしますが,何のことはない,諸外国ではすでに全数把握を中止したり,無駄な検査をやめたからです.日本のように,心配だから,会社や学校が求めるからというだけで検査をすれば,数が増えるのは当たり前で,その点を全く考慮せず大騒ぎしているわけです.

 政府は今回ばかりはさすがに批判を恐れて意味のないマンボーなどの行動制限を発令していませんし,これだけマスコミがギャンギャンと煽っても帰省や旅行のキャンセルもそれほどではなく,以前のblogにも書いたように,すでに国民の大部分はこの馬鹿げたコロナ狂想曲に辟易して,反旗を翻したのだと思います.

 政府もようやく重い腰を上げて,濃厚接触者の待機期間を短縮したり,すでにパンクしている保健所の負担を減らすため,8月からは重症化するリスクがなければ保健所からの感染者への連絡を省略,健康観察や状態報告を感染者本人に任せるようになったことは評価できます.

 さらに2類に落とすことを検討しだすとのことですが,もう「検討」ではなく明日にでも「実行」してほしいところです.
 2類に落とすと今まで全て公費(つまり保険料や税金)で賄われていた検査に通常の医療と同じく自己負担が発生します.
 しかしもうこの国の社会保障費は火の車,国民皆保険制度の存続さえ危ぶまれている今,そのツケは必ず今の若い人たちにかかってくることを考えると,2類に落とすことにより無駄な検査,念のための検査を抑制する効果になると思われますし,保健所への報告義務がなくなりますので医療機関や保健所の負担も減ります.
 そうすることにより,残念ながら重症になってしまった方々にこそ余裕を持って医療資源を集中出来ようというものです.

 先日大阪市立大学准教授の城戸先生(この先生は政府にとってはアンチなので決して厚労省の専門家会議などには招聘されませんが)が,日本のコロナ対策は諸外国より周回遅れだと述べられていましが,まさにその通りで,今の政府の事なかれ主義,決断力のなさが招いた結果でしょう.

 初期の頃はコロナというものの実態がわからず,世界中が手探り状態だった.しかし2年以上が経過して病態や治療法など様々な知見が集積されて,インフルエンザにおけるタミフルのような気軽に使える特効薬は開発途上ながら,経済活動を停滞させず対処していく方法がわかってきた.にもかかわらず日本のやり方は初期の頃と何ら変わっておらず,世界に置いてきぼりにされているということです.

 果たしてラスト100メートルで猛スパートをかけて他国に追いつくことが出来るでしょうか?残念ながら現状を鑑みるにあまり期待はできそうにありません.

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Source: Dr.OHKADO’s Blog

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