寝るのが勿体ない。

その他

乳がん治療中、

「眠れない」

と、母にボソッと呟いたことがある

「そのうち一生寝られるって」――

母の応えに絶句した

冗談にもならない

がん患者に...

娘に...

よくそんなことが言えたものだ

乳がん告知を受けた日から、
眠れなくなった

最初は、“がん”という衝撃

食べられず、何も手につかず、
2週間落ち込んだ

深い眠りを取り戻せないまま、
検査、手術へと移行する

2週間の入院中、
一度も熟睡することなく退院

自分が使い慣れたベッドと枕は
心地が好かった

が、“がん”という病が引き起こす、
大きく真っ暗な闇と再発の恐怖に、
夜は涙ばかり流れてきた

そしてそこに、
ホルモン治療の副作用が加わる

身体はつらいが、眠れない

心がしんどければしんどいほど、
眠りから遠ざかる

このまま眠ってしまったら、
朝は来ないような気がした

眠れないつらさはあったものの、
眠るのも怖かった

人間、質のよい眠りは必要だ

それががんなら尚のこと

なぜなら睡眠は、
免疫力を上げてくれるから

が、がんになって、
命に限りがあると実感して、

「眠るのが勿体ない」

そう思うようになった

淋しい夜

孤独な深夜

カーテンの隙間から外を眺めて、
どこかに灯りはないか見渡す

そんなとき、窓の灯りをみつけると、

「ああ、あそこの家の人もまだ起きている」

と、なんだか嬉しくなったっけ

  今日の空

2022/08/08 空

  ちょっと複雑な雲

  この淡い青が、なんとも好きである

さ、

今夜は少し早めにベッドに入ろうか――

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Source: りかこの乳がん体験記

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