小泉純一郎総理以前、卒業式は総理が臨席するが、目の前での帽子投げは失礼だとのことでそれ以前に総理は会場を離れ、帰路についていた。そのあとの自衛官任命・宣誓式は防衛大臣が臨席していた。ところが、それまでの前例を排して小泉総理自身も自衛官任命・宣誓式に参列する意向を示した。となると、官邸サイドとしては総理の拘束時間が問題となり、結局、卒業式のあと学生たちは着替えることなく、学生服のままで自衛官任命・宣誓式に臨んでいた。帽子投げも、従来通り、総理が退席してからであった。
小泉総理退任後、日本の政局は流動化し、民主党政権も誕生するが、その前後は毎年総理が変わるような状態であった。私が学校長となってからも、数年は小泉総理以来のスタイルで卒業式と自衛官任命・宣誓式を続けていたが、こうした手順に不満をもつ卒業生も多かった。
■「自衛官服に着替えたい」安倍元総理に直接お願いをした学生服のままで自衛官任命・宣誓式を行うことが、防大卒業式の美学に反するというのだ。ところが、短命政権だと、総理にお願いするのも気がひける。そこで安倍政権が長期となることが確実となると、総理に直接に改善をお願いした。卒業式のあとに学生たちは帽子投げをして、いったん学生舎に戻り、新装の自衛官服に着替えてから会場に戻り整列する。総理が任命・宣誓式も参列されるとなると、この間、最低でも30~40分の延長となる。総理大臣にとって時間は命だ。しかし、安倍総理に直接お願いしたところ、即決、「それで結構です。自衛隊最高指揮官として最後までいます。帽子投げも壇上で見たい」とのことで、卒業式と任命・宣誓式は、防大美学に沿った現在のものに改善された。ちなみに、学生たちが戻るまでの間、総理と私たちは昼食懇談となる。小さな変化かもしれないが、一生を国家・国民に捧げる覚悟を決めた若き自衛官の大事な門出、彼らにとっては一生の重みをもつにちがいない。
「それで結構です。自衛隊最高指揮官として最後までいます。帽子投げも壇上で見たい」
こんな当たり前のことが、安倍総理になるまでできなかった。
それが日本の異常さ、自衛隊軽視、防衛というものの軽視を表わしていますね。
Source: 身体軸ラボ シーズン2
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