8月15日、お盆――
“天候が崩れる知らせ”と言われている、
うろこ雲といわし雲が広がる空
「今夜からあさってにかけて大雨」だと
天気予報で言っていたっけ．．．
そんな中、きのうは実家へ
．．．と、その前に、
いつものおそば屋さんで腹ごしらえ
実家の庭先には、
母が好きだった花が今も並べられている
母が亡くなったあとも絶やすことなく、
7年間、父が引き継いで植えてくれているのだ
ちょっとセンスは悪いが．．．
仏壇にはごはんやおみそ汁やおかず、
母が好きな果物などが
いつもきちんと供えられている
まめにやっている父の姿を想像すると、
なんだか切ない
夜は、
最後に母との約束を叶えられなかった会食へ
・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆
母が「余命2ヶ月」と告げられた2週間後、
（母は最期まで
自分の余命を知らなかった）
「もうこれが最後かもしれない」と、
予約をとったホテルでの会食
そのホテルは母の希望の場所でもあった
「頑張って、（がんを）治します！！」
みんなの前で、そう誓っていた母
が、そこにいた誰もが
母の残りの命の時間を知っていた
「今日は私が払うから」
と言う私を制し、母は、
「いいって。私が払うから」
そう言ってお金を私に差し出す
本当は最後に私がご馳走をするつもりだったが、
『ここは母の望みを素直に受け入れよう』
と、お金を受け取った
精算を済ませると、1万円余った
「これ、多かったから．．．」
と、母に返そうとしたが、
「そのお金でまた食事しよう。
だからそれまで取っておいて」
と、お金は受け取らずに、
次に行きたいお店の名前をあげた
「うん、わかった」
．．．が、たぶん、次はない
これが最後だ．．．
私は果たせるはずのない約束を母と交わし、
父の腕にしがみつきながら
おぼつかない足取りで遠ざかってゆく母の後ろ姿を
見つめていた
・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆
あれから7年
その1万円は使うことなく、
しまってあった
『母が行きたかったあの店に、
母の誕生日に行こう』
そう思いながらも行けずにいたのだ
そしてきのう、
ようやく母との約束を果たすことができた
ただ、母が望んでいたお店ではなかった
今回の会食は、お寿司屋さん
たぶん、母も喜んでくれるお店だと思う
7年間、しまってあった1万円札
ようやく少し、肩の荷が下りた気がした
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Source: りかこの乳がん体験記
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