Incyte社が開発した11β-HSD1阻害薬 INCB13739は
11β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素(11β–HydroxySteroid Dehydrogenase)のType1のみを阻害し,Type2は阻害しない『選択的 11β-HSD1阻害剤』です.
メトホルミン単独では HbA1cが8%程度にしか下がらなかった2型糖尿病患者を対象として行った第2相臨床試験では,空腹時血糖値やHbA1cが低下し,めだった副作用はありませんでした.
INCB13739の臨床試験はこれだけではありません,米国の臨床試験データベースを見ると,この試験を含め他に2本の臨床試験,つまり 合計3本の試験を行っています.
2番目の試験が前回記事で紹介したものです. 3つの試験は いずれもつつがなく完了(Completed)しています.
この実績から,INCB13739 は数年以内には 更に第3相試験に進み,それが順調であれば実用化されるだろうと予想されました.
ところが ここから消息がふっつりと途絶えてしまうのです.
途絶えた報文
下記は PubMedでINCB13739を検索した結果ですが,
2013年以後ほとんど言及されなくなりました.
最近(2022年8月)にReviewが1報出されていますが,それは 前回記事でとりあげたRosenstock(2010)の報文を引用しているだけで,何か新しい情報が付け加わったわけではありません.
また ICNB13739の開発元である Incyte社のHPを見ても,ICNB13739 はPipeline(新薬候補の進捗度一覧)に掲載されてはいるものの,試験を完了(Study Complete)したという時点で情報更新が途絶えています.
要するに 将来性確実と見られた11β-HSD1阻害薬:INCB13739は 突然姿がみえなくなったのです.
Incyte社からはINCB13739は断念したとも,あるいは開発を継続して第3相試験に進めるとも,どちらのアナウンスもないので 現時点では これ以上のことはわかりません.
なお,2013年という年は INCB13739だけでなく,11β-HSD1阻害薬自体が曲がり角にたった年でもあります.
PubMedで”11beta-hydroxysteroid dehydrogenase type 1″を検索すると この通り;
2013年をピークに論文数は増加から減少に転じたのです.
[続く]
Source: しらねのぞるばの暴言ブログ
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