それでも僕らはユーモアを忘れない。

医療機関

先生あの日な、よお揺れたんや。

二階でみんなで寝とったわ。覚えとる。

役場の障害福祉課で働いとったんや、ワシ。

せやから、あっちにこっちに大変やったなあ。

 

決まって今日は、どこの家でも28年前の震災の話になる。

みんなそれぞれ必死に生きてきて今日を迎え、人生を振り返る。

だからこそと言ってはなんだが、今日は楽しくピンコロの夢を語り合う。

 

先生、ワシなあ、、ちょっと長生きしすぎたわ。

年末は、息子や先生の顔立てて入院もしてみたんやけどな、

今度はもうゴメンやで。この心臓の薬かてホンマは要らんと思うねん。

 

慢性心不全で腎不全、高血圧で、生死を彷徨ったお父さんは、

入院での内服の調整でずいぶんと良くなったせいも有って

元気になりすぎ、さらに鼻息荒く話を続ける。

 

今度はなあ、このリビングで、バタンってなってポテチンってなって、そんな感じで、

ピンピンコロリで、あの世がエエんや。先生、ピンピンコロリやで!

わかってるんか?!今度は入院連れていったらあかんで、な。ピンピンコロリや!

 

僕らの会話を黙って聞いていたパーキンソン病の奥さんが、突然、

 

ハハハハハ~~~フフフフフフ~~~~

っておっきな声で笑い出した。

 

どうされました?

 

だって、先生、もうお父さんとっくに、役たたんのよ。

だってそうでしょ?! チンチンコロリチンチンコロリって、、

ふふふ~~~ハハハ~~~~

 

そう言って恥ずかしそうに頭から毛布をかぶられた。

 

震災を乗り越えいろんなことが有ったけど、

この夫婦は、こうやってユーモアいっぱいで生きてこられた。

今も、たくさんの病気を抱え、不自由もありながらも、

沢山の在宅の医療介護関係の仲間が彼らを支える。

でももしかしたら、僕ら医療介護関係者は、逆に、

こんなザイタク患者さんに支えていただいているのかもしれない。

 

28年前の阪神淡路大震災のこと、決して忘れず、

でも、こうしたユーモアも決して忘れず、人生を歩んでいきたい。

 

改めて、震災で旅立たれた方に哀悼の意を表します。合掌。

 

 

出会えた奇跡は死なない 永久に 

僕の中で 今 僕らの中で

 

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Source: 兵庫県三田市の在宅療養支援診療所「たなかホームケアクリニック」

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