深夜0時に、ヘッドライトをシルバーカーのかごに入れ、
右足を引きずり、どこかへ一生懸命に向かうおじいさん。
しばらく、眺めていたが、飲み屋のベンチで座り込んで、
引きずっていた右足をなにやらさすっておられる。
表情は険しい。こんな寒い深夜に一人、シルバーカーを押し、
どこかに向かうのもちょっと難しそうだったので、思い切って声をかけた。
ぎょっとした表情でこちらを見る。
構わんといてくれと言わんばかりに、慌てて立ち上がり、
足を引きずり横断歩道を渡っていく。
深夜には開いていない銀行のATMの前でひとしきり困ったご様子。
もう一度徐ろに近づいて、なにかお困りですかと尋ねると、
ワシは誰にも迷惑かけるようなことはしてへんぞと言葉を荒げられる。
そりゃあそうだ、タナカのほうがよっぽど怪しい身なりをしている。
それでもこのままほっとけないので、お巡りさんに連絡を取り、
なんとかコンビニ前で、彼にたどり着き、その後、ご家族のもとへ。
彼はどこに行きたかったのか。
彼はどんなふうに暮らしてきたのか。
彼のこれからの自由な外出は叶うのか。
そんな事を考えながら、家に帰って、
ホント1月は頑張ったから焼酎炭酸割りを一杯。
気が付いたら、2時を回っていたので、
慌ててお風呂に入って、お布団に潜り込んだ。
認知症があっても、病気があっても、障害があっても、
みんなで楽しく自由に暮らせる街になりますように。
それを、みんなでまた考えたいなと思いました。
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Source: 兵庫県三田市の在宅療養支援診療所「たなかホームケアクリニック」
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