開業医も楽じゃない((+_+))

内科医

   9月も終盤,来月からいよいよ消費税がアップすることになり,軽減税率の導入だの,キャッシュレス決済の促進だのと日本中が大騒ぎになっていますが,医療機関も例外ではありません.

   周知のごとく,保険診療を行う医療機関は国(厚労省)によって決められた診療報酬制度によって報酬が決まるため,初診料,再診料はもちろん,検査,投薬,注射,処置等々あらゆる医療行為ひとつひとつに対してこと細かく報酬や算定要件が決められています.

   つまり保険診療である限り,患者さんから消費税を徴収することや料金を自由設定することはもちろん出来ないわけですが,反面,診療に必要な物品や薬品,またテナント料や光熱費等には当然消費税がかかるため,最終的には消費税は医療機関の持ち出しとなってしまいます.

   従って消費増税の影響は通常の小売店以上で,大きな病院クラスになるとその規模も数億円にもなりますから,ある意味死活問題ですが,実はこのことは一般人にはあまり知られていません.

   今回もそれを補うべく10月1日から初診料,再診料などの診療報酬が多少アップしますが,とても増税分を補えるような代物ではなく,ほとんどの医療機関が収入減となることは避けられません.診療報酬の規定によりがんじがらめにされている中での対抗策はと言えば,患者さんの数や診療単価を増やすしかありませんが,もちろんそれにも限界があります.

   今から20〜30年くらい前までは,まだ社会保障の財源に余裕があり,診療報酬の規定もゆるゆるで,なんと老人医療費は無料でした.
  私が女子医大にいたころ時々アルバイトで行っていたある個人病院は,驚くことにどの患者さんにも来院のたびにまず心電図を取っていました.私は雇われる身ですから疑問を感じつつも何も言いませんでしたが,当時はそんなことがまかり通っていたのです.もちろん今そんなことをしたら厚生局から一発で指導が入るでしょうし,患者さんからもクレームが入るでしょう.

   翻って今,社会保障の財源が逼迫し,このままでは年金制度も国民皆保険制度も破綻してしまうという状況になって政府もようやく重い腰を上げたというわけで,消費税増税もやむなしということでしょうが,今のような少子高齢化時代が必ず到来することが予見できていたにもかかわらず,こんな放漫経営を放置していた国にも大きな責任があり,特に今の若い人たちはその犠牲者ともいえます.

   医療においても,今の医療機関は過去のツケを払わされているといえなくもありませんが,限りある医療資源をいやでも適切に使わざるを得なくなってきたという意味では健全になってきたといえるかもしれません.

   そうは言っても,クリニックのような中小医療機関とて,自分だけでなく家族やスタッフの生活を支えねばなりませんから,医療倫理にもとらない適切な医療を行うのことは当然としても,経営のことも考えざるを得ないのは当然です.

   当院も,少しでも消費増税の悪影響を減らすべく,医療材料や注射製剤を,質は落とさずにより安いものに代えたり,取引業者に値引き交渉をしています.
   また開業後から,保険診療を補うべくアンチエイジング関係の点滴治療などを中心にした自由診療を始めたところ,土地柄もあって美意識や健康意識の高い方々が多く利用して下さって総売上の10%以上も占めるようになり,大変助かっています.

   自由診療は読んで字のごとく,価格設定や消費税の徴収は自由とはきえ,誰もが少しでも気軽に利用できるようにまさに薄利多売で提供してきましたが,今回はやむなく一部値上げせざるを得なくなりました.

   当院も開業11年半となり,幸い患者数,売り上げもまだ右肩上がりですが,同時に税金も増える一方です.国には,私たちの血税を1円たりとも決して無駄にせず,少しでも国民の幸福に資するような施策に活用していただくことを強く望みますし,そうであれば支払い甲斐もあろうというものです.


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Source: Dr.OHKADO’s Blog

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