ドロッポ医(高給マックジョブ)は理想の仕事なのか?

その他ドクター

 

医師の仕事の醍醐味とはなんだろうか。

 

  • 珍しい病気を診断できたときの喜び
  • 難しい治療を成功させたときの達成感
  • 患者から感謝されたときの自己肯定感

 

一言でいうと「やりがい」なのではないだろうか。

今回は仕事のやりがいについて考えてみたい。

 

マックジョブとクリエイティブクラス

 

橘玲先生によると、世の中の仕事は「マックジョブ(バックオフィス)」と「クリエイティブクラス」の2つに分けられるそうだ。

 

  • マックジョブ(バックオフィス)
  • クリエイティブクラス

 

マックジョブは誰でもできる代替可能な仕事。

こうした仕事の象徴がマクドナルドの店員で、厳密に定められたマニュアルどおりに作業すれば、新人でも初日からベテランと同じハンバーガーを焼くことができる。

このようなスキルが不要なマニュアル化された仕事は、給与は低く自己実現はないが責任もない。

マックジョブでは大金は稼げませんが、仕事や人間関係で悩むこともありません。

 

一方、クリエイティブクラスとは専門家(スペシャリスト)や芸術家(クリエイター)。

大きな責任を担い強いストレスがかかる代わりに、高い収入とやりがいを期待できる。

医師は専門家でクリエイティブクラスに属する。

 

しかし医師には、やりがいに満ちあふれた王道キャリア以外にも、脱毛クリニックやAGAクリニック、健診、寝当直など、スキル不要でやりがいがない仕事もたくさんある。

そしてそんなマックジョブでも、それなりの収入を得ることができるのである。

 

いわば高給マックジョブ。

それが医師免許の最大のメリットだが、そんなにうまい話があるのだろうか。

 

勤務医の転職

 

王道キャリアから外れ、高給マックジョブとして生きる医師が書いたキンドル本がある。

この内容が非常に興味深い。

 

筆者が最初に勤務したのは老人介護保険施設。

仕事は入所者の健康管理で勤務は8時半~17時半まで。週4日勤務で年収1500万。

驚くほどの好待遇である。

 

回診はなく、会議への出席は求められない。施設長室にいるだけでいい。

そこで求められていたのは「何もしないこと」だった。

何かあれば相談します。呼ばれない限りは部屋にいてください。しかし施設長室にいてもコールはない。

 

何もせずに高給が得られるという理想的な仕事のように思われる。

しかし著者は医師としてのやりがいを求めてしまう。

医師として適切な業務がやりたい、と。

自分の中でドクターとしての業務は適切にやりたいと思った。

金儲けをする手伝いのためではない。適切な医療行為をするために老健に来ている。

医師だけでなく看護や介護やPTや栄養士やケアマネもはいって会議をやるべきだと経営陣にわたしがねじ込んだ。

 

結局、経営陣との関係がこじれて退職。

しかしすぐに次の就職先が見つかるのが医師免許の強さである。

 

とはいえ、どの職場でも「何もしてほしくない経営陣」と「医師としての仕事をしたい筆者」との衝突から退職に追い込まれてしまう。

 

このようにマックジョブにやりがいを求めれば破綻するのは必然と言える。

王道キャリアから外れたならば、割り切って対応すべき。

 

…と筆者をバカにしていたのだが、実際にその立場になると冷静に対応できない自分がいた。

 

マックジョブの実際

 

自分がマックジョブを経験したときのこと。

確かに仕事の内容は驚くほど簡単なのに給与はなかなかである。

 

しかしこれがけっこうキツイ。

ひたすら単純作業の繰り返し。なんのスキルも必要とされない代わりに達成感や、やりがいは存在しない。

 

そこでフラストレーションが溜まっていたのだろう。

ある皮膚トラブルが起こった際のこと。

 

その職場にはどんな医師でも対応できるようマニュアルが完備されていた。

マニュアル通りの対応でも問題なかったのだが、専門分野なのでついつい出しゃばってしまう。

そこで現場と少し揉めてしまったのだった。

 

客観的に見れば「勤務医の転職」の筆者の問題点を指摘することはできる。

しかし実際にその立場になると同じようなことをやってしまうのである。

 

まとめ

 

楽で稼げる。

こんな理想的な仕事はないように思われるが、案外うまくいかない。

贅沢な話ではあるが、我々は承認欲求を満たさないと生きていけないのかもしれない。

仕事とは別のところで自己実現できる人でないと続けるのは難しいのだろう。

 

SNSでドロッポ医が王道キャリアの医師をバカにしているのを目にすることは多い。

ドロッポ医とは

常勤勤務医から「ドロップアウト」して、非常勤・スポットバイトなどで食いつないでいく医師のことをドロッポ医と呼ぶ。

 

彼らはやりがいのない仕事の中で承認欲求を拗らせてしまった人なのかもしれない。

そしてこんな仕事が今後も存続するとは考えにくい。

出口戦略なしにその道へ進むのはかなりのリスクである。

Source: 皮膚科医の日常と趣味とキャリア

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