『高度な知性』が来ましたよ

公教育においては，特定の宗教を推奨することは禁止されており，科学教育のみが行われる．
『神による万物創造』は宗教であり，進化論は科学である．

1987年のこの米国最高裁判決により，『人は神により創造された』という聖書の教えを米国の公教育で行うことは完全に不可能になりました．

つまり公立学校では，科学に基づく進化論しか教えられなくなったのです．

米国のすべてのキリスト教会が進化論に反対しているというわけではありません．多くのメジャーな会派は学校での進化論教育に反対しておりません．またカトリックの総本山であるバチカンですら，現代の進化論は受容しています(1996年10月22日；教皇ヨハネパウロ2世．ただし人間の霊は神により創造されたとする[PDF]）．

しかし，伝統的に敬虔なキリスト教信仰の家庭に育った米国人にとっては，これは聖書に対する冒涜だとして絶対に許容できないでしょう．『大人になってからならともかく，公立学校においてまだ小さい子供に聖書を軽んじる教育をするのか』と．

その手があったか

どんな手を使ってでも進化論が学校で教えられるのをやめさせたい，そう思う人たちは，1987年の米国最高裁判決文の中のこの一文に着目しました．

The people of Louisiana, including those who are Christian fundamentalists, are quite entitled, as a secular matter, to have whatever scientific evidence there may be against evolution presented in their schools, just as Mr. Scopes was entitled to present whatever scientific evidence there was for it.
　
ルイジアナ州の人々は、キリスト教原理主義者であっても、世俗的な問題として、進化論に反対する科学的証拠があるのならそれを学校で発表する権利がある。これはスコープス氏が進化論を支持する科学的証拠を提示する権利があったのとまったく同等である．

1987米国最高裁判決 Page 482 U. S. 634

宗教 vs. 科学なら不可であっても，科学 vs. 科学であれば積極的に教えて構わないというわけです．その一例として考えられるのは，ダーウィンの自然選択による進化論ではなくて，(現在では否定されているものの)ラマルク[★]の獲得形質遺伝による進化論などでしょう．

[★] ちなみに Biology(生物学)という用語を初めて使ったのはラマルクです．余談ですが，ぞるばは，『ラマルクの進化論』はエピジェネティクスの研究が進展すれば復活するのではないかと考えています．ラマルクの唱えた『用不用が進化の原動力』という考えは，環境が変化しなければ生物は進化せず，環境が激変すると突然進化するという『断続平衡説』をごく自然に説明できるからです．

そこで考え出されたのが，神による人類創造説を，宗教ではなく科学であるかのように仕立て直した【インテリジェント・デザイン説】(＝ID説) です．

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