中年になると感性が変わってくるようだ。
昔は大好きだった映画を観なおしてみると、以前と違った印象を抱くようになった。
そこで今回は昔ほど感動できなくなった映画を5本紹介したい。
ショーシャンクの空に
感動の名作として有名な「ショーシャンクの空に」。
冤罪によって投獄された主人公アンディが、刑務所の中でも希望を捨てず生き抜いていくヒューマンドラマである。
どんなときも「あきらめない心」が大事というメッセージは心に響く。
逆境の中でも、あきらめずにコツコツと努力すれば必ず道は開けるんだ…とかつての自分は感動したのだった。
しかし今改めて観てみると、アンディが脱獄するために必要だったのは「あきらめない心」ではなく「コミュニケーション力」。
アンディは朴訥とした人物だが、実はコミュ力は高い。刑務所内に仲間を作り、刑務官も懐柔するしたたかな人間である。
もしコミュ力がなければアンディは野垂れ死にしていただろう。
結局世の中はコミュ力すべてということ。
コミュ力が乏しく、失敗ばかりの自分は絶望するばかりである。
プラダを着た悪魔
ジャーナリスト志望の主人公アンディがパワハラ上司ミランダの下で前向きに頑張る姿を描く。
この映画のテーマは「仕事かプライベートか?」。
一流の仕事をするためには家庭やプライベートを犠牲にする必要がある。
アンディはすべてを犠牲にして仕事で評価されていくが、あるときプライベートの重要さに気づく。
仕事よりも大切なものがあるはずだ、と。
そして仕事をすべて放棄して本当の幸せをつかむ…というエンディング。
昔はそんなラストにカタルシスを感じていた。
しかし今観ると、残った社員の苦労が忍ばれてツラい。
アンディが放棄した仕事は、他の社員たちが死に物狂いでカバーしたはずだ。
一方のアンディは涼しい顔で幸せな生活をエンジョイしている。
組織は辞めたもん勝ちで、逃げ遅れた人間の負担が増え続けるのである。
似たような経験を経た後では、とても感動できなくなってしまった。
レオン
孤独な殺し屋レオンと家族を殺された少女の交流と復讐の戦いを描く。
ジャン・レノ演じる不器用なレオンと、ナタリー・ポートマン演じる少女マチルダの友情と愛情。
マチルダの若い愛が、愛を知らないレオンの孤独な心を癒していく。そんなストーリーにかつては感動した。
しかし今は「寂しい限界独身中年」としてのレオンに自分を投影してしまい、痛くてとても見ていられなかった
現実世界にはマチルダ(中年の心を癒してくれる存在)はいないという絶望…。
レインマン
自由奔放で利己的な主人公が、自閉症の兄との交流で人間として成長するというヒューマンドラマ。
最初は兄を疎ましく感じていた主人公だが、2人の間に徐々に友情が芽生えていく。
そんな兄弟愛に昔は感動したんだけど、今みると疾患がキレイゴトに描かれすぎな気がする。
自閉症患者の聞き分けが良すぎる…心を通わせるのはもっと大変だろ…とか気になって素直に楽しめなくなった
シン・ゴジラ
言わずとしれた庵野秀明監督の名作映画。
ゴジラを怪獣映画ではなく、ポリティカル・フィクションとして描くという意欲的な作品である。
災害シミュレーションとしての側面から、怪獣という不足の事態に対応する日本政府の姿がリアルに描かれる。
日本組織にありがちな意思決定の問題から迷走を続ける政府。しかしラストは日本が得意とする民間の工業力を結集してゴジラに挑む。
そんな巨大な災害に立ち向かう人々の姿、日本の底力に感動を覚えた。
しかし今観ると、若干冷めた目で見てしまう自分がいる。
昔は「日本もまだ捨てたもんじゃない」というファンタジーにまだ現実味があった。
しかし今はもう受け入れられなくなってるのだと思う。
まとめ
かつては感動できたものが感動できなくなってしまう。
様々な人生経験を経て成長したと言えるのかもしれないが、悲しくもある。
そのぶん別に感動できるものが増えていると思いたいのだが、どうだろうか。
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