たぶん、形見。

その他

1.4℃

冷えこんだ朝

それでも日中は19.5℃

陽射しがありがたい冬の入り口――

「そろそろ取り換えなきゃ...」

そう思いながら、
そのまま使っていたブレスレット

2023/10/12 手作りのブレスレット

10年ほど前になるだろうか

私の誕生日にいただいたものだ

これを贈ってくれたのは、
声も顔も知らない、乳がんの女性

乳がんの転移で
抗がん剤治療中だった彼女

つらい身体にもかかわらず、
会ったこともない私をイメージして
石をひとつひとつ選んで
作ってくれたのだ

彼女もブログをやっていた

が、そのブログは、
2013年12月23日で止まったまま

「あしたはクリスマスイブ。
 なのに抗がん剤治療」

そう綴ったまま、彼女は二度と
ブログを更新することはなかった

がんの状態が思わしくないのはわかっていた

最悪のことは考えたくない

「きっと、元気にしているさ。
 乳がんのことから離れて、
 ブログから離れて、
 元気に生活しているさ」――

が、その思いはすぐに打ち消される

「きっとこのブレスレットは、
 彼女の形見になってしまったのだ...」

出かけるときは、
必ずこのブレスレットをつけている

いつも彼女と一緒だ

そしてこのブレスレット

定期的に
ゴムを取り替えているにもかかわらず、
2度、切れたことがある

1度目は、今から5年前

家電量販店で
突然体調が悪くなったことがある

突如として、
“限局性恐怖症”のような症状に
襲われたのだ

  パニック障害のひとつで、
  当時、私はこの症状に苦しんでいた

そのとき突然、ブレスレットが切れた

慌てて散らばったストーンを拾い集めたが、
たぶん店内の片隅に
転がったままの石があったと思う

でも、なんだか
彼女が助けてくれたような気がした

2度目は4年前

マンモグラフィと超音波検査のあと、
着替えをしているときだった

「悪いもの、
 彼女が持っていってくれたのかな...」

と、非現実的なことを思ったりした

しばらく取り換えてないゴム

久し振りに、交換しよう――

  彼女とは、
  これからもずーっと一緒

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Source: りかこの乳がん体験記

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