自分はクリエイターに興味があって色々な本を読んできた。
自分には昔からモノづくりに対する憧れがあった。
そのため、制作の裏話が大好きで、これまでいろいろなクリエイターの本を読んできた。
創作についての本だけでなく、いかに作品を売るかというマーケティングについて書かれた本も興味…
このような制作の裏側を見ていると、成功の法則がありそうな気がしていた。
しかし現実はそんなに甘くないようだ。
今回紹介するのは、現在行き詰っている小説家の先生が書いた失敗学の本。
この本から成功の法則について考えたみたい。
成功の法則①分野を変える
筆者はもともと純文学志望。
だが新人文学賞に応募するも一次選考止まりで落選が続く。
そこで違う分野へチャレンジすることを決意。
自分は純文学の書き手なのだと思い込んでいたが、実はそれとは異なるプラットフォームにこそ、自分の作品を受け入れてくれる余地があるのではないか。
そして片手間に応募した作品で日本ファンタジーノベル大賞を受賞。エンタメ小説化としてデビューを果たすことになった。
このように、ある分野では鳴かず飛ばずだった人が、別の分野で開花するというのはよく聞く話である。
これは成功の法則と言ってよいだろう。
成功の法則②書きたいものより売れるもの
そして、ここで一つの選択肢が浮かび上がる。
- そのままエンタメ小説家の道を進む
- 純文学の道へ戻る
筆者はエンタメ小説家の道を進むことを決意する。
まず実績を打ち立て、描きたいものを描ける立場になる。
まずはこの領域で目に見える「実績」を打ち立てることだ。
そうすれば今よりも発言権を得ることができるはずだと思った。
純文学を書くのはその後。
一定量売れるという既成事実を作りさえすれば、作品の方向性を純文学寄りに転じたとしても、「出せません」とは言わないはずだ。
まず実績を築き上げることで「描きたい作品が描ける」作家に自分を鍛え上げる。
これはプロとして成功するための道と思われる。
たとえば漫画家の浦沢直樹先生はもともとサスペンスを書きたかったのだという。
しかし当時は「美少女もの」の全盛期。
浦沢先生はまずヒットをねらうため、苦手な美少女ものに挑戦。その結果「YAWARA!」「HAPPY!」は大ヒットし売れっ子作家となった。
そうして人気を盤石なものにした後、ようやく本来書きたかったサスペンス「MONSTER」の連載を始めることができたそうだ。
しかしこの戦略も必ずしもうまくいくわけではないようだ。
売れっ子作家になれず文学作品への道が閉ざされてしまった今、筆者はこの選択を後悔している節がある。
成功の法則③トライアンドエラー
どんな分野でもヒット作は偶然生まれることが多いようだ。
計算してヒット作を生み出すことは難しい。
音楽と言うのは「めちゃくちゃ練って作った渾身の一曲」が全然売れない事も良くあるのです。
その逆もあって「ノリと勢いで作曲したモノが意外と受けて売れた」なんてパターンもあるのです。
(アーティストの下積みは何年くらい?早く抜け出す方法も教えます)
とにかくたくさんの作品を作り、その中でヒットしたものを育てる。
これは音楽の世界でも行われている成功の法則である。
いわゆる「曲をたくさん作って宣伝し運よくバズったらラッキー。それまではただひたすらに作曲・宣伝していく」これくらいの気持ちが必要です。
(アーティストの下積みは何年くらい?早く抜け出す方法も教えます)
筆者はデビュー後さまざまなジャンルの小説に挑戦する。
デビュー作は不条理小説。
2作目は恋愛ファンタジー、3作目は自伝的小説、4作目は青春小説。
さらにお仕事小説や群像劇にも挑戦している。
その中で当たったのは青春小説である。
出版時は特に話題にならなかった青春小説「冥王星パーティー」だが、6年後に文庫化されたときに大きな変化が起こる。
「あの日の僕らにさよなら」と改題された文庫版が大ヒットしたのである。
しかし決して出来の良い作品ではなく、ヒットした理由はよくわからなかったそうだ。
この作品が特に優れているとは、僕にはまったく思えなかった。
出来のよさでランクづけするなら、下から数えたほうが早いほどの位置づけに置いていた。
この本がなぜ売れたのかは、いまだにわからない。
ヒットはやはり偶然の産物。
数多くチャレンジしてその中で当たったものに全掛け。
筆者はその定石に則り、似たテイストの新作を書き下ろす。
熱が冷めないうちに、早急に次の手を打つ必要があった。
しかしこの戦略もうまくいくわけではないようだ。
2作目の青春小説は不発に終わる。
作品としての完成度も目に見えて高かったと思う。
今度こそ、ばつの悪い思いをすることもなく正々堂々と読者の前に差し出せると胸を張っていたのだが、この本は(例によって)不発に終わった。
成功の法則④編集者のテコ入れ
5作目の執筆時のこと。
「ラストの展開を変えてほしい」という編集者からの要望があったそうだ。
「このままだとけっこう悲惨なバッドエンディングになるような気がするんですが、あまありそっちの方向に行かないようにしていただくわけにはいきませんでしょうか」
そこで筆者は納得いかないながらも原稿を直す。
納得もしていないのに、ただスムーズに本にしてもらうためだけに節を曲げ、言われたとおりに原稿を直したのである。
このような編集者のテコ入れでヒットした作品は多い。
たとえば「Dr.スランプ」では、当初則巻千兵衛が主役として描かれる予定だったが、編集者・鳥嶋の強い意向により女の子タイプのロボットのアラレを主人公とする漫画へと変更した。
しかしテコ入れは必ずしもうまくいくわけではないようだ。
ラストを修正したにもかかわらず5作目の「株式会社ハピネス計画」は売れず、後悔を残す結果となった。
なんでもかんでも無条件に受諾し、盲従すればいいというものではない。
そこで次の作品では自分を貫くことに決める。
「3人の主人公のうち1人の設定を変えたほうがいい」という編集者からの提案。
三人の主人公のうち二人が似すぎているから、どちらかの設定を変えるべきではないか、という意見がついていた。
これが僕には容易に受け入れられなかった。
筆者はこの提案に反発し原稿を引き上げたそうだ。
そしてそのままの形で、別の出版社から刊行。
しかしこの作品「大人になりきれない」もやはり売れなかった。
この作品が多くの読者から支持を得ることはなかった
編集者からのテコ入れに従っても、従わなくても結局売れない。
これも成功の法則とは言い難いようである。
成功の法則⑤原点回帰
行き詰まった時は原点回帰。
様々な商品開発でも用いられる手法である。
そこで筆者はデビュー作である不条理小説への回帰を目指す。
僕の書き手としての本質はそこにあると思っており、勝負をかけるなら、僕特有の資質が最も鮮明に現れるはずのその路線で挑むべきだという考えだったのだ。
そして質の高い満足のいく作品「3.15卒業闘争」が完成。
自分としては胸を張って打ち出せる自信作だった。あの手この手でそのエッセンスを活かそうとしては今ひとつ成功していなかった世界観の再現を、こんどこそ制限なしで実現できたというたしかな手応えがあった。
しかし初版部数が削られたこともあり、ヒットすることはなかった。
セールスは例のごとく惨憺たるものだった。
原点回帰も成功の法則ではないようだ。
まとめ
成功の法則と言われるような試みにこれだけ挑戦しながらも、ことごとく裏切られる。
うまくいったのはデビュー時の「分野を変える」だけである。
世の中には本当の成功の法則はないということだろう。
実力勝負の厳しい世界。自分ではとても太刀打ちできそうにない。
クリエイター志望の自分にとっては非常にためになる本だった。
Source: 皮膚科医の日常と趣味とキャリア
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