帰り道
バスを待つ
学生たちで混雑した車内
それでもこの停留場で
乗客の約半数が降車し、
いくつかの席が空いた
『あぁ、最後のひとつだ。
これで立たずに済む...』
私はやおら、席に着いた
すると、私のあとから
杖をついた60代くらいの女性が乗ってきて、
私の斜め前に立った
もう席は空いていなかったのだ
『譲るべきか...』
と、少し考えた
が、私も立つのはしんどい
『どうしよう...』
そう思いながら、
ふと、窓のほうに目を遣ると、
“優先席”のステッカーが貼られている
そう、
たった一つ空いていたこの席は、
優先席だったのだ
誰もが知っているように、
“優先席”とは、
“電車やバスなどで、
高齢者や身体の不自由なひとが
優先的に座れる席”
ステッカーには、
○お腹の大きな妊婦さん
○赤ちゃんを抱いたお母さん
○松葉杖をついているひと
○杖をついているひと
...のイラストが描かれている
『どう考えても私がここに座るより、
杖をついているあの女性だよなぁ...』
今では“内部障がいを持っているひと”も
優先的に座れる優先席
抗がん剤で体調が悪いひとでも、
外見では判断がつかない障がいを
抱えているひとでも、
優先的にここに座ることができる
各自治体では
援助を必要としているひとに、
“ヘルプマーク”も配布している
そんな私も、
市のホームページからダウンロードをして、
“ヘルプカード”をつくった
このとき、私は
ヘルプカードをつけてはいたが、
やはりどこか気が引ける
“優先席は、私が座るべき席ではない”
そんな思いがあった
うしろから、トントン...と肩を叩かれ、
「席、あの方に譲られてはどうですか?」
なんて、
誰かに言われそうな気がしてならなかった
ふと、通路の向こうに目を遣ると、
若い男性がスマホをいじって座っている
そのうしろの席にも
若い男性が陣取っている
席を譲るか譲らないかは、
きっと私だけの問題じゃない
乳がんの手術をしたあと、
重いものが持てなくて、
治療の副作用で体調が悪く、
バスに立って乗っているのもしんどくて、
でも、優先席は使えなかった
あの当時はヘルプマークもまだなかった
が、あっても、
きっと手に入れることはしなかったと思うし、
万万が一手に入れたとしても、
堂々と優先席に座ることはできなかったとも思う
...というのも、この街は田舎だ
バスを利用するのは、
学生か高齢者が圧倒的に多い
高齢者は、
そこがまるで指定席であるかのように、
優先席に腰を下ろす
杖をついていたあの女性に
席を譲らなかったことに、
なんだか気持ちがすっきりしない
少し前の私なら、
この席には座らず立っていたのに――
夜の帳が下りる頃
大好きな空の色
大好きな街の色
嗚呼、温かな12月
雪はいつ積もるのか...
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Source: りかこの乳がん体験記
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