波乱の幕開け

内科医

 新しい年が明けました.

 年末年始は,横浜に住む次女夫婦が孫を連れて帰省して来ました.
 昨年秋に3歳になった孫の成長たるや驚くほどで,明るくおおらかな両親に似て伸び伸びと天真爛漫に育っていました.
男の子らしく(というと最近はジェンダーなんとやらでうるさい人がいますが,ご容赦を),電車や働く車や恐竜が大好きで,大人顔負けの知識を見せてくれます.
 すでに通常の日常会話ならば十分意思疎通できますし,また遊びながら自分で物語を色々と作って一生懸命に話してくれる姿には,本当に愛らしさを感じます.

 孫を連れて道を歩いていると,彼は自分の視線に入るものは,植物でも石ころでも虫でも,とにかく何にでも好奇心を示してすぐに立ち止まってしまうため,なかなかまっすぐには歩かせてくれません.彼にとっては毎日の全てのことが新鮮で刺激に満ちているわけで,子供はこうやってどんどん成長していくのだと実感します.

 思い起こせば私たちとて子供の頃は,毎日が新しい経験や刺激に満ち溢れてワクワクし,夏休みは永遠に続くようにさえ思えました.
 老化とは未知の経験や好奇心がどんどん少なくなって毎日がマンネリ化していくこと,それが故に体感時間がどんどん短くなっていくことに他ならないと誰かが言っていましたが,いい得て妙だと思います.

 さて今年は,平和な年明けを願う私たちの想いとは裏腹に,よりにもよって元旦,能登半島を襲ったマグニチュード7.7もの大地震という波乱の幕開けで始まりました.地震と津波で多くの家屋やインフラが崩壊し,地震から3週間以上経過した現在,死者は二百人以上,いまだ行方不明者も数知れず,一万人以上の人々が厳寒の中,不自由な避難生活を送っています.

 年末年始の休み,多くの人々が故郷に帰省し,父母や親戚や旧友たちと久しぶりの再会を喜び楽しんでいたであろう幸せなひとときが,たくさんの大切な命とともに一瞬のうちに失われた悲しみたるや,本当に察するに余りあります.
 妻や子供たち全員が倒壊した家の下敷きになって落命し,ほんのわずかなタイミングの違いで自分だけが助かってしまった男性が,自分も一緒に死んでいればどれだけ楽だったか,と涙ながらに話していた姿を見た時,同じように大切なな家族を持つ身としてとても他人事とは思えず,本当にこの世は神も仏もないのか?なぜこんなに理不尽なことが起こるのか?と,まさに胸が張り裂けそうな思いでした.

 石川県といえば,金沢市や山中温泉,また今回被災した七尾市の和倉温泉も観光等で訪れたことがあります.
 3年前に宿泊した,おもてなし日本一といわれる有名な旅館「加賀屋」も当面営業停止を余儀なくされたとのこと,地震からの復興が早く進み,また元の姿を1日でも早く取り戻せるよう,祈るばかりです.
 私も心ばかりですが,石川県にふるさと納税で寄付を行いました.

 今回の地震もそうですが,昨今は不気味なほど世界中で異常気象や天変地異が頻発,またウクライナや中東の情勢を見るまでもなく世界情勢たるや核戦争の勃発を危惧させるほど不安定な状態になっており,空恐ろしいばかりです.

 いったいこれからの日本は,そして世界はどうなっていくのか,この先の未来に私のみならず誰しもがとてつもなく大きな不安を抱いていると思います.
 私たちはもはや,平和な日々がいつまでも続くというような幻想を抱いて日々の生活を安穏と暮らしているわけにはいかないのかもしれません.
 今後私たちひとりひとりに必要なのは,学歴や資格や安定した仕事に従くことが重要でないとは言わないまでも,自分の人生にどんな逆境が待ち受けようとも,どんな場所,どんな時代に生きようとも,図太く,力強く,そして柔軟に乗り越えていくサバイバル能力なのかも知れません.
 まだあどけない純粋無垢な孫の姿を見て,そんなことを思わざるを得ない年始でした.

 それでも思いはひとつ,今年も私を含め家族全員が無事で元気でありますように,そして日本や世界が平和でありますように!


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Source: Dr.OHKADO’s Blog

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