お店や役所に行くと、ぶっきら棒で感じの悪い従業員に出会うことは少なくない。
その理由について、はてなダイアリーに興味深い投稿があった。
「お店や役所に問い合わせ電話する時は、まず明るい声でおだやかに「お忙しいところ恐れ入りますぅ」って言おう」
お店や役所の従業員は、電話を受けるときに「頭のおかしいクレームじゃないか」と常に身構えながら電話をとっている。
種種雑多な不特定多数の人から電話がかかってくるところでは、電話を受ける時に「頭のおかしいクレームじゃないか」と常に身構えながら電話をとっている。
そんなとき、こちらがまともだということを伝えられれば、従業員を安心させることができる。
そんなとき、明るくおだやかな「お忙しいところ恐れ入りますぅ」は、彼らを一撃で安堵させることができるよ。すっとガードを下げてくれる。
お店や役所の従業員がぶっきら棒な理由はクレームに身構えているから。
安心させることができれば、彼らは柔和な態度に変わることが多いそうだ。
僕は、電話に出た時はぶっきら棒だった相手の口調が、これを言った途端に突然柔和に変わるという経験を何度もしてる。
自分のことを振り返ってみても、この記事の内容は間違っていないと思う。
今回はクレームについて書いてみる。
診察室の緊張感
かつてクレームが多い職場で働いていた時のこと。
理不尽なクレームを警戒して、常に気を張っていた。
それが相手にも伝わるのか、診察室がピリピリとした緊張感に包まれていた気がする。
そのため患者との軽い諍いみたいなものも多かったように思う。
しかしクレーム対応が少ない職場に変わり少し時間が経ったとき、診察室の緊張感が減っていることに気づいた。
それがなぜなのか考えてみると
自分の態度に余裕が出ているからでは…と思い至ったのだった。
はてなダイアリーの投稿にあったように、クレーマーを相手にしていると警戒心が強くなり、愛想がなくなってくるのは間違いない。
前の職場では「ぶっきら棒な態度」になっていた。
しかし職場が変わって自分の態度が柔らかくなっていたのである。
職場環境で重要なのはまず「自分の心理的安全性が保たれるかどうか」、と気づかされた出来事であった。
日ごろ理不尽な電話を受けることもある人々にとって、まともな相手との通話はオアシスだ。(無意識のうちに)「この人と通話している限り自分の心理的安全性は保たれる」と感じるはずだ。
Difficult Patientの対応技術
診療の際にネガティブな感情を抱くことは少なくはない。
それにどうやって対処すればいいかが書かれた本はたくさんある。
診療の現場で出会うDifficult Patient(困った患者)。
彼らに対する陰性感情が誤診の誘因となり、診療のアウトカムが悪化することが知られているという。
陰性感情が診断エラーの誘因になることがあります。Difficult Patientの症例では患者のアウトカムが悪化してしまうことが知られています。
本の内容をまとめると、Difficult Patientと感じる原因は患者ではなく医師自身にあるとのとこ。
Difficult Patientを患者のせいにする前に、医師自身がDifficult Patientにしている可能性について思いを巡らせましょう。
したがって患者中心の良質な医療を提供するためには、Difficult Patientの対応スキルを磨く必要があるそうだ。
患者中心の良質な医療を提供するために必要な技法を身につけ対応できなければなりません。
こんな具合に「クレーマーにネガティブな感情を抱くのは自分が未熟だから」であり「スキル次第で克服できる」という内容になっている。
確かに対応技術を磨くことも重要だろう。
しかしその内容が心の支えになったことはない。
理不尽なクレームに対して、すべて自責マインドで乗り切るというのはムリな話である。
こういう本には医師自身のメンタルケアという観点が不足している気がしてならない。
まず自分の心理的安全性を保ち、バーンアウトを防ぐことが重要なのではないだろうか。
まとめ
最近、客を選べない仕事が不人気になってきているという。
変な客の多い職場では働きたくない、と。
診療をしていると理不尽なクレームに遭遇することもある。
いきなり喧嘩腰。何を言ってもキレる。診察後はしっかり病院にクレーム。
その一人のせいで外来診療が嫌になる。
最近、客を選べない仕事が不人気になってきて…
「まともな人としか働かなくていい」ことが今後職業を選ぶ際に重要になってくるそうだ。
しかし医療の世界はアクセスフリーのto Cビジネス。客を選べない仕事の最たるものである。
Difficult Patientの対応技術を磨くことは重要である。しかし小手先の対応では限界がある。
長く仕事を続けていくためには、ある程度職場を選ぶことも必要なんだろうと思う。
Source: 皮膚科医の日常と趣味とキャリア
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