≪私の記録 295≫ 「出ていけ!!」事件 ① ~父との口論~

    2010年10月23日(土)

以前...

確か、前々回のがんサロンの
前日くらいだっただろうか

なので1か月半くらい前になる

父と言い争いの末、

「出てけ!!」

と、云われたことがある

思い出すのも悍ましいので、
日記には書かずにいた

が――

その日もいつものように、
私は台所で夕飯の支度

母は買い物

父は庭で剪定作業をしていた

しばらくして父が
汚れた作業服のまま居間を通り、
慌ただしくドカドカと
台所までやってきた

「ちょっと!!
 そんな汚い格好で
 台所に入って来ないでよ!!」

私は思わず声を荒らげた

父のそんな無神経なところに
私はいつも苛立っていたのだ

父は喉が渇いて
水を飲みに台所まで来たらしい

コップ一杯の水を一気に飲み干すと、

「ぷは~っ」

と、大きな息を吐いて突然、キレた

「オレだって気遣ってんだ!!
 今だってちゃんと外で砂払って
 家に入ってきてるんだ!!」

「はぁ!?
 そんなの当たり前のことでしょ!!
 そんな当たり前のことに、
 “気遣ってる”なんて云わないでよ!!」

そして父は、
台所に置いてあったあんパンをひっつかみ、
ビリっと袋を破った

私に背を向け、
左手を腰に当て、
右手で鷲掴みにしたあんパンを
立ったまま、
むしゃむしゃ、くちゃくちゃと
食いはじめた

『こんなときにあんパンなんか、
 よく食えるね』

そう思っていると、
いきなり父はこう云った


「そんなにオレのやることが
 気に食わないんだったら、出てけ!!」

『え? “出てけ”? それ、云っちゃう?』

こっちも売り言葉に買い言葉

「出てけばいいんでしょ!? 出てけば!!」

切りかけの野菜と包丁を放り出し、
私は2階の自分の部屋に上がった

が、啖呵を切ったものの、
行く当てもなく...

いくら娘でも...

しかもその娘は、乳がん

今、治療中

しかも副作用がひどくて、
毎日、心と身体の不調と闘っている

先も見えなくて、
命だってどうなるか...

車もない

お金もない

仕事もしていない

そんな私に行くところはない

仕事もしてなければ、
お金もなければ、
アパートだって借りられないのだ

それなのに、「出ていけ!!」って、
私に「死ね」と云っているのと同じだよね

『わかった。じゃあ、死んでやるよ』


私は荷造り用の紐を取り出した

ハサミで適当な長さに切って...

天井を見上げると、
ちょうど手頃なフックがかかっている

『死んでやる。絶対死んでやる!!』

...が、私はその紐を
首にかけることはできなかった

死ぬ勇気もない

やり残している『がんサロン』の原稿も
気がかりだ

それにこんな人生でも、多少の未練はある

結局私は出ていくこともできず、
死ぬこともできない中途半端な人間...

情けない

このまま家に居座ることしかできない自分に
嫌気がさす

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Source: りかこの乳がん体験記

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