咳が出れば、肺転移か...
腰が痛めば、骨転移か...
そんなことを思っていたのは、
術後、何年間だろう
さすがに10年を過ぎた頃から、
そんな不安も少しは慣れてくる
一年に一度の画像検査も、
「もし再発していたら...」
と、結果を聞くのが怖かった
が、これも5年を過ぎたあたりから、
恐怖感は小さくなっていった
でも、不安は“ゼロ”にはならない
乳がんであることも、忘れることはできない
それは、乳がんになったことは、
紛れもない事実だから
そしてそれは、
ずっと抱えていかなければならない現実だから
だからたまに、そんな現実に疲れる
“乳がん”という世界から逃れたくなる
“がん”という文字を目にすることも、
“がん”という言葉を耳にすることも疎ましい
がんサロンにさえ、行きたくない
それでも私は、
がんでつらい思いをしているひとを放っておけない
がんで悲しんでいるひとに寄り添っていきたい
だから、告知されたときの気持ちも、
おっぱいを失う恐怖も、
治療の副作用も、
再発の不安も、
忘れたくない
忘れてはいけない
私が乳がんになったばかりの、
真っ暗な闇の中に迷い込んでいた頃
そのとき、乳がんの先輩たちに教えてもらった、
“がん”という不安
「私だけじゃないんだ。
みんな同じことを思っているんだ」
そう知ったときの、あの安心感や共感を、
今度は私が伝えていく番
今朝の空
こうして空が美しく感じられることも、
乳がんが教えてくれたこと
ごはんがおいしく食べられることが
当たり前ではないことも、
平凡な日常が本当はしあわせなことも、
すべて、がんが教えてくれたこと
現実は、
“キャンサーギフト”なんて、
きれいな言葉では済まないけれど...
失ったものも多いけど...
それでもたくさんの宝物を
手に入れることができた
それは決して触れることのできない、
“心”で感じるもの
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Source: りかこの乳がん体験記
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