命 日 ~聞きたかったこと。聞けなかったこと~ 

「あぁ、まだ髪が匂ってる...」

朝、シャンプーをするも、
きのうの母の七回忌法要のお香のにおいが
残っている

  一度髪ににおいがつくと、3日は取れない

  焼き肉のにおいがついたときは
  一番不快だ

  食べているときは
  あんなにも“至極のとき”なのに...

そして今日が祥月命日

「もう6年か...」

同じ時期にお互いのがんがわかったとき、

「私の方が先に逝く」

そう思っていたが、
がんとは、本当にわからないものだ

今では街を歩いていても、
母の姿を探すことも少なくなった

母と似たような背格好の人を見かけると、

「母だ!!」

と、ドキッとすることもほとんどなくなった

乳がん治療中、両親から、

「出ていけ!!」

と、実家を追い出され、
母から隠れるように生きていた数年間

あのときの生活からようやく逃れられた

が、幼少期の記憶からは逃れられない

母の死とともに葬り去られるものと思っていたが、
その醜い記憶は濃くなるばかり

  あなたは私のことを愛したことがありますか

  あなたは何を思いながら、
  私を殴り続けていましたか

  そこに後悔はありましたか

  少しでも「悪いことをした」と
  感じたことはありますか

  少しでも、「可哀想なことをした」と
  思ったことはありますか

  今でも私のことを「産まなきゃよかった」と
  思っていますか

母に聞きたいことはたくさんある

でもそれは、聞きたくないことでもある

知らない方がいいこと、
知ったことで傷つくこともある――

今日の最高気温は37.2度

「そういえば、
 6年前のあの日も暑い日だったな...」――

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Source: りかこの乳がん体験記

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