5/17から開催される 第67回日本糖尿病学会 年次学術集会の 講演・発表 抄録が閲覧可能になっています.
ただし 閲覧できるのは参加登録を済ませた人のみです.
前回記事でも述べた通り,今学会は 糖尿病基礎研究にかかるシンポジウムが多数行われます. そのあおりをくって,プログラムを見る限りでは,食事療法については 相対的に比重が軽くなっているようです.
食事療法にFocusしたシンポジウムはこの2本のみです.
シンポジウム16 食事療法の戦略化―成功に導くための新たな視点
5本の講演が行われますが,食事療法のガイドラインというよりは,そもそも Precision Nutritionはどうあるべきかという基礎レベルの視点のものですね.
シンポジウム45 食事・カロリー制限に学ぶ健康寿命の延伸
低カロリー食は 健康寿命を延長し長寿に効果があるということでしょうね.
また 単発でこういう講演もあります;
シンポジウム10 腸内環境とSugar:health and disease
S10-4 High Sugar に重点を置いた糖尿病食事療法の新しい方向性
タイトルを見ると『腸内環境から見て 高糖質の食事がいいのだ』という提案だと誤解しそうですが,抄録を見るとその逆でした.
シンポジウム32 高齢者糖尿病の療養を巡る課題と展望―拡大するニーズにどう対応するか
S32-3 食事療法の課題と展望~個別化に対応し,フレイル・サルコペニアを予防する~
また教育講演では;
教育講演18
EL18 糖尿病の食事療法を再考する
が行われます.
以上を見ると,本年秋に予定されている『糖尿病診療ガイドライン 2014』で どういう路線を打ち出すのかが あまり見えてきませんね.もう原稿はほぼ確定しているはずなのですが.
また 3月25日に公開された『健康食スタートブック』も演題にはとりあげないようです.(教育講演では言及するでしょうが).
なお今回は 会長特別企画1で ジョスリン糖尿病センターの重鎮 Ronald Kahn博士の講演があります.前回(第64回)の登壇から まだ3年しか経っていないので,再登場とはちょっと驚きです.
博士の今回の講演テーマは;
Insulin Resistance is The Primary Driver of Type 2 Diabetes and Associated Metabolic Syndrome
インスリン抵抗性は 2型糖尿病およびそれに関連するメタボリックシンドロームの主要因である
すべてはインスリン抵抗性なのだ,それ以外にはない,という前回講演とほぼ同じ内容と思われます.
たしかにジョスリン糖尿病センターの重鎮にこう説かれると 誰も異論は唱えられないでしょうね.
博士の視点からすれば,痩せ型日本人の糖尿病は 何かの間違いか,非常に例外的な事象と映っているのかもしれません.実際 欧米では 『肥満=『糖尿病』=『インスリン抵抗性』これしか存在しないのですから無理からぬところでしょう.
想像なのですが,日本人の研究者が,インスリン分泌不全のみが特徴で インスリン抵抗性皆無の 日本人糖尿病患者について 報告しようとしても,欧米の医学誌では Reject(拒絶)されてしまうのではないでしょうか. 『なんだ,この論文原稿は? 糖尿病=インスリン抵抗性 という基本知識すら理解していない無知な奴が書いたのかな』などとね.
一応 今回のこのシンポジウムでも;
シンポジウム14 アジア型糖尿病は存在するか?遺伝的および疫学的特徴から
欧米の糖尿病と 東アジアの糖尿病とでは,遺伝的にも 典型的病態にも かなり異なるのだよという報告はされるようですが,さて それがKahn博士の記憶に残るでしょうか.
Source: しらねのぞるばの暴言ブログ
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