君の声を聞かせて。

医療機関

昔、抗がん剤の止め時に関して、丁寧なご講義を受けたことがある。

その先生は患者さんを思って、真実を真摯に話されたので、ある日、

大病院を異動になった。もちろん、よくある話だ。この医療界では。

 

 

さて、彼が真摯に話された、抗がん剤の止め時は、こうだ。

 

日常生活動作に支障が出た時が止め時だ。とのこと。

 

抗がん剤は、広義では、延命治療の一種だ。延命効果を求め治療にあたるのだが、

その効果が認められなくなった時ではなく、日常生活動作に支障が出た時が、

抗がん剤の止め時。だそうだ。おそらくこれは、本当の意味で、真実なのだろう。

 

 

 

さて、今日、訪問診療させていただいた患者さん。

一年前からアルツハイマー型認知症が重度化し、

ご自身には消化器がんがあるのだが、「無い」と話される。

大病院では、当然ながら、延命効果を図れる間は、薬は続く。

 

「先生、私、お父さんが病気は認識してないけど、

抗がん剤を続けてるんです。私の病院受診のついでに、

お父さんも点滴してもらい!とかなんとか、言って、

ちょうどいい嘘ついて、抗がん剤打ってもらってるの。」

大切なご主人を愛する奥さんは、ニコニコそう話される。

 

「先生、父には、長生きして欲しいとか、

そんなことやないんです。この小さな体の母が、

介護に困らん程度に、自分のことは自分でする、

そんな父で居て欲しいから、無理くりに、

抗がん剤を続けてもらおう思うとるんです。

なんか、おかしいこと言ってますか、僕は?」

両親のことが大切な長男さんが神妙なお顔で話される。

 

さてと、認知症のあるお父様に、どうですか?と尋ねると、

「あんた先生か?ワシな、どこも悪ないで。

入院はまっぴらごめんや。なんで点滴しとるんかシランケド。

オカンの顔見れて、声が聞こえとったら、それでええねん。

せやけど、あんた医者か?ワシ死ぬ時、ちゃんと来てや。」

 

残された時間は、半年と大病院の先生が話されていたそうだ。

抗がん剤治療の止め時は、延命効果ではなく日常生活動作障害の進行。

 

『暮らし』が一番、『延命』は二番。

自分事として大切な人の人生を考えてみよう。

 

 

 

ご主人思いの奥さんは、ニコニコだったけど、

ここでも、止め時をひとり悩まれておられた。。。

 

もう一度言おう。『暮らし』が一番、『延命』は二番。

 

 

僕たちはいつか終わるから

踊る  いま  いま

ご自身の『暮らし』を大切に。

良かったら聴いてください。

 

 

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Source: 兵庫県三田市の在宅療養支援診療所「たなかホームケアクリニック」

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