この記事に書いた通り;
日本糖尿病学会が一般の内科医向けに隔年で発行している『糖尿病治療ガイド』は,2022年4月に発行された「糖尿病治療ガイド 2022-2023」が現時点での最新版です. 本来であれば,とっくに「糖尿病治療ガイド 2024-2025」が発行されているはずなのですが,それが遅れています.本日は 8月31日です. 念のため,17:00まで待ってみたのですが,やはり8月中には発行されませんでした.
これまでの治療ガイドの発行年月の推移をみると 以下の通りです.
原則として偶数年の4月に,2年度にまたがる治療ガイドが発行されてきました. 4月よりも多少遅れた場合もありますが,ほぼ原則通りの発行で推移してきたことがわかります.
ところがこの図の通り,2024年度も半分経過した本日時点で,2024-2025年版の治療ガイドが発行されていないのは異例なことです.
これまでも糖尿病の新薬情報の追加や,投薬アルゴリズムの変更など,治療ガイドの内容がかなり大きく改訂されたこともあったのですが,その場合でも これほど大きく発行が遅れることはありませんでした.
学会から特段のアナウンスはないので,2024-2025版の発行がいつになるかは不明ですが,明日からは2024年度も後半期に入ります.つまり2024年度前半は治療ガイドが存在しなかった,これが確定したわけです.
学会から発行される治療ガイドの最新版を律儀にチェックしている医師はそう多くはないかもしれません. ただ だからといって半年くらいはなくてもいいだろうということにはならないでしょう.
今回これほど改訂版発行が遅れている理由は何なのでしょうか?
想像されるのは,糖尿病に対するスティグマ解消のために;
【1】「糖尿病」「患者」「血糖コントロール」「栄養(療養)指導」などという呼び方を廃止し,それぞれ「ダイアベティス」「ダイアベティスを有する人」「血糖マネジメント」「指導という言葉は使わない」に言葉の置き換えを行った. このため,大幅なページ数の増加,段組み変更が発生した.
【2】10年以上にわたり 治療ガイドでは,「遺伝的要因に 過食(特に高脂肪食),運動不足,肥満,ストレスなどの環境因子及び加齢が加わり,糖尿病が発症する」と解説してきた. これを素直に読むと,診察室で医師の前に座っている糖尿病患者が どんなに痩せていても『高脂肪食を過食した人』ということになってしまうので この表現をあらためようとした.
などが考えられます. 上記中 [1]は単純な単語置き換えに伴う編集作業にすぎません. たしかに手間はかかりますが,時間が解決してくれます.
しかし[2]の方は,ではどのように表現を改めるのか,となると 「絶対反対」「変える必要はない」という声が大御所あたりから出そうですね. ただし ぞるばの私見では「過食・運動不足で糖尿病が発症する=だから糖尿病患者はだらしない人間」というイメージを作り上げてきたのは この一文が大きく寄与してきたと思っています.つまり日本糖尿病学会が作り上げたスティグマなのです.
しかし,いくら何でも「2024-2025年版」の発行が2025年1月以降になっては,さすがに名称と一致しませんから,頑張って2024年12月31日までに発行するか,または名称を『糖尿病治療ガイド 2025-2026』にするのではないでしょうか.
Source: しらねのぞるばの暴言ブログ
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