英国の糖尿病患者データベース(GoDARTS) 及びオランダの糖尿病患者データベース(DCS)から,新たに2型糖尿病と診断された人を,それぞれ6,145人,3,054人選び,その検査値(発症時の年齢・BMI・HbA1c・C-ペプチド・HDL・中性脂肪)を指標にして データ駆動型クラスター解析 (Data-driven Cluster Analysis) したところ,2型糖尿病という診断病名は同じでも,かなり病態の異なる5つのグループに分かれることが判明しました.
このグループ分類は,糖尿病と診断された時点でのデータで行われたのですが,その後10年以上追跡してみても,SIDD(=インスリン分泌不全性重度糖尿病: Severe Insulin-Deficient Diabetes)を除いて,その特徴をよく保持していることもわかりました.
それでは,この追跡期間中,それぞれのグループの検査指標数値は どのように変化(あるいは不変)していったのでしょうか? それがこの論文の検討主題でした.
その結果をまとめるとこうでした.
たしかに 初期から10年ほど追跡しても,SIDDを除く各グループは割合安定していたことが 頷ける結果ですね. ほぼすべての指標は 診断時点と大きくは変わっていません.例外は HbA1cのこの動きですが;
SIDDのHbA1cだけが最初の2年以内に大きく低下しています. しかし,これは当然でしょう. SIDDの人は診断時点で 既にHbA1cが危険なほど高い人が多かったので,最初から強力な治療(インスリンなど)を行ったのです.
そして,注目のMDH(=高HDL 軽度糖尿病: Mild Diabetes with high-HDL)ですが;
MDHの人は,初期だけでなく,その後も一貫して HDLが高いままでした.
そして,MDHの特徴である,低い中性脂肪(TG)もやはり維持していました.
ただし このデータの解釈には注意が必要です. この研究において,対象者は『2型糖尿病と初めて診断された人』ですが,このことは 『それまでは健常であった』ことは意味しません. つまりそれまでは糖尿病とは言われていなかったが,他の持病は持っていた人も多かったのです. したがって『糖尿病と診断されるまでは いかなる薬も服用していなかった』という人は,実は少数でした.大多数の人は既に他の薬を服用していたのです. 具体的にはスタチンなどです. だから 冒頭のグラフの左下で すべての人が 妙にLDLが低いのです.
Source: しらねのぞるばの暴言ブログ
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