先生、その入院の意味を教えてください。
私達は父の命の長さではなく、
父のプライドを守りたいのです。
今流行りのACP(アドバンスケアプランニング)。
在宅介護が始まってからずっとご家族と繰り返してきた。
今朝からけいれん発作が始まった。
先週から全体的にダウンヒル。
腫瘍塞栓による脳梗塞。
その後のけいれん発作。
臨床症状から想像できることをお伝えした。
確定診断には画像診断が必要で入院が要る。
入院加療を勧めると、
彼女らは冒頭のご質問。
父はここで旅立ちたいのです。
それだけはずっと言ってました。
もし今、入院したとして、
そして、検査したとして、
確実にここに戻ってこれる、
そんな確約はありますか?
一日二日命を伸ばしたいなんて、
父も私達も思っていません。
叶えたいのは父の大切な思いです。
愛する母と一緒に最期まで居たい想いです。
けいれん発作で揺れている父の姿をみても、
ここで見送りたいとご家族みんながハッキリと話される。
母も娘も、ちゃんと父の意向通りに行動されている。
僕ら医療者がすべきことは、
対応を決定することではなく、
いついかなる時も丁寧な説明だ。
この繰り返しによって、
ご本人もご家族も、ご自身達で、
決定決心されていく。
早朝からのけいれん発作。昼頃には治まった。
そして、夕方に静かに穏やかに旅立たれた。
今日の旅立ちもまた沢山のことを教えて頂いた。
本当に素敵なザイタク看取りだった。合掌。
先生わたしこの人と沢山ケンカしてきたのよ。
だからね、ちょっと少し寂しくなるわね。
そう話される奥さんの目には涙だった。
それを聴いておられる様な寝顔のご本人は、
いつも通りにとってもやさしいお顔だった。
欲しいものは、時間ではなくプライド。
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