今年もはや1ヶ月が過ぎました.年末年始は次女夫婦が孫2人を連れて久しぶりに帰省,賑やかな日々でした.昨年亡くなった父の生まれ変わりのようなタイミングでこの世に生を受けた2人目の孫はすくすくと育ち,表情や仕草も豊かになってきました.
4つ年上の上の孫も天真爛漫に活発に,そして何よりも好奇心旺盛に育っており,話をしていても常に「なんで?」「どうして?」と質問攻めで周囲を困らせています(笑)
あの発明家エジソンが小学校の頃,授業中にあまりにも質問をくりかえすので先生の怒りを買ってしまい,母親が学校を辞めさせて自宅で教えたというのは有名なエピソードですが,子供の成長のいちばんの原動力となる好奇心をいつまでも失わないようにしてあげられれば,と思います.
さて,年末年始から今月半ばにかけてはインフルエンザや新型コロナ,マイコプラズマといった呼吸器感染症が激増,例によって検査キットや薬剤の出荷規制まで起こったほどで,クリニックでも毎日のように陽性者続出でしたが,季節がら通常の風邪や気管支炎,それらが悪化することによる肺炎も増えています.
インフルエンザは症状が辛いですし,新型コロナは最近の株は重症化しにくいとはいえ後遺症や長期予後についてはまだ未知の部分も多いので慎重に対処した方がいいとは思いますが,実はむしろ通常の風邪の対処方法について,もう少し考え方を啓蒙した方がいいと思っています.
急性上気道炎,いわゆる風邪は,冬などの乾燥した時期には咽頭にウイルスが付着して増殖しやすくなるためにおこります.通常は多少ウイルスが付着しても身体に自然に備わっている免疫能が働けば発症せずウイルスも死んでしまいます.
ですので予防は何よりうがいや手洗いと言った基本的なことに加え,しっかりとした部屋やのどの加湿と,十分な休養と水分や栄養補給等により免疫能を高く保つことに尽きます.
風邪薬を飲んで治った,と思っても,正確には,実は薬自体が根治したのではなく,薬で症状を抑えつつ,ウイルス自体は自分の免疫能でやっつけて治した,ということです.
そもそも風邪を引き起こすウィルスは,コロナウイルス(新型コロナウイルスではなく),ライノウイルスなど約200種類もあり,それらがアトランダムに原因になる上に変異もします.
そのため単一のウイルスが原因で起こる新型コロナやインフルエンザとは異なり,風邪のワクチンや抗ウイルス薬を作るのは困難でまた現実的ではありません.そんなものが出来たらおそらくノーベル賞級ではないでしょうか?
つまり,いわゆる風邪薬というのは根治薬ではなく単なる対症療法で,咳なら鎮咳剤,喉の痛みなら鎮痛剤,発熱なら解熱剤,というように症状に合わせて飲むわけです.従って総合感冒剤と称するものも,症状に合わなければ効かないということです.
もちろん,咳や咽頭痛がひどければ辛いし体力を消耗しますから,対症療法ではあっても薬によりよく眠れて体力が回復し,ひいては免疫能が上がる,という意味では役立っていると思います.
昔は,風邪は三日三晩寝ていれば治ると言われ,まさに言い得て妙なのですが,忙しい現代人にはそんなことは困難なので薬に頼らざるを得ないという面もあるとは思います.
そう考えると,身体がだるいのにルーチンの筋トレやジョギングを頑張るとか,会費がもったいないからジムに行って運動するというのは本末転倒ですし,咳が止まらないと言いながら喫煙をしまくっているのもどうかと思います.
それから,すぐに抗生物質を求める患者さんがいますが,抗生物質は細菌(バクテリア)の増殖を抑える薬ですので,そもそもウイルスが原因で発症する風邪には効きません.
ですがこのことが意外と知られておらず,抗生物質信仰のある患者さんがいまだに多くいるため,説明するのに苦労します.
日本では社会的背景等もあって今まで抗生物質を乱用しすぎていたため,耐性菌ができてしまい本当に必要な時に効かないという弊害も出ており,これは我々医療側も反省しなければなりません.
もちろん細菌が混合感染している可能性のある場合や,高齢者や基礎疾患があり肺炎になるなど重篤化しそうな場合は使うこともあるので,その見極めこそは我々の出番です.
また少し発熱したからといってカロナールやロキソニンのような解熱剤をやたらと飲むのもよくありません.
長引く風邪で来院される患者さんの中にも,とにかく37℃くらいですぐに薬を飲む,すると解熱するので楽にはなるのですが,またぶり返してくる,なのでまた飲む,という悪循環を繰り返している方が少なくありません.
発熱は,免疫が働いて,白血球やリンパ球がウィルスを攻撃しているときに起こるものです.火炎放射器でウィルスを焼き殺しているというイメージです.
この状態の時に解熱剤を飲むと,その炎をわざわざ消してしまっているわけで,結局ウィルスが生き延びてしまうわけです.風邪を引いて夜中にパジャマを替えなければならないほど汗をかいたら,翌朝スッキリして元気になっていた,ということがよくありますが,まさに熱をガーッと出して汗をびっしょりかく,というのが一番自然な治り方なのです.
もちろん高熱の時は非常に辛いですから,必要に応じて解熱剤を飲むのはやむを得ないとも思いますし,また発熱や咳が長く継続している場合には風邪とは限らず,他の疾病が隠れていることもありますので,そんな場合こそ要受診であることをつけ加えておきます.
医療機関への受診が基本的にフリーアクセスの日本では,軽い風邪でも受診する傾向にありますが,混んでいる待合で長時間待たされること自体が却って症状を悪化させる可能性もありますす.
欧米諸国では市販薬(OTC薬),しかも処方薬と同等以上の効果があるものが日本に比べて非常に多く売られています.医療システムも異なりますし賛否もあるでしょうが,日本でも風邪薬くらいはもう少し規制緩和してOTC薬を増やし,最初はそれで経過をみる,それでも治らなければ受診してもらう,というようにした方が,受診の手間を減らせる点でも医療経済的な点でも効果的だと思います.
もちろん日頃から風邪をひかないように,ひいても軽く済むように生活出来ればそれに越したことはありません.とはいえストレスや誘惑の多いこの現代社会にあってはそれも容易ではなく,私自身も偉そうなことは言えませんが‥‥(笑)
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Source: Dr.OHKADO’s Blog
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