人生の交差点

内科医

 早いもので3月ももう終わり,街のあちこちではすでに桜の花が開花し始めています.

 今月半ばに母校の岐阜大学医学部の同窓会が岐阜市内の会場で約6年ぶりに行われ,参加してきました.
 約90人の同窓生のうち3分の1が出席,懐かしい顔ぶれに久しぶりに再会,大学時代の思い出に浸りながら楽しいひと時を過ごしました.
 残念ながら数名のものはすでに鬼籍に入っていますが,ほとんどの者が,何らかの形でまだ現役の医師として医療の第一線で元気に仕事を続けていました.

 以前のブログにも書いた通り,運命のいたずらで私が岐阜というなんの縁もない地方都市で6年間を過ごすことになったことは私の人生の最初の大きな分岐点となりました.
 もしも私が岐阜ではなく地元の大学に行っていたら,人生は大きく変わっていたかもしれませんし,今のかみさんと出会うことも,今の娘たち,孫たちが生まれることもなかったでしょう.
 そう思うと人生とは本当に不思議なものだと思います.

 私が在籍していた40年以上前は,岐阜大学は各学部が3カ所に分散している,いわゆるタコ足大学でしたが,医学部は岐阜市の中心部にありました.
 医学部のすぐ南には,美川憲一のヒット曲「柳ヶ瀬ブルース」で有名な柳ヶ瀬商店街があり大変賑わっており,私たち医学生や医学部関係者も日常的にお世話になったのはいうまでもありません(笑).

 しかし時の流れは残酷で,岐阜も少子高齢化,人口減少の波を逃れることはできず,柳ヶ瀬も寂れてシャッター街のようになり,    先日は県内最後の百貨店だった高島屋柳ヶ瀬店も閉店してしまいました.
 私が卒業してまもなくしてから大学全体が医学部も含めて岐阜市の郊外に統合移転されたことも要因のひとつかもしれません.

 JR岐阜駅前は週末にもかかわらず人通りはまばらでしたが,皮肉なことに,帰りに乗った岐阜から名古屋に向かう列車は満杯で,ショッピングやレジャーのためには,むしろ30分ほどで行ける名古屋に出かけるようになったのだと推察できました.

 自分が青春時代の6年を過ごしたところが衰退してしまっているのは寂しいところではありますが,ある意味やむを得ないのかもしれません.

 それでも私たちの頭の中には,当時の賑々しく楽しかった日々の思い出が走馬灯のように流れており,今回の同窓会を通してタイムスリップしたような気分でした.

 私の大学生時代は,国立大学はまだ授業料が非常に安く,毎月たった6000円でした.経済的にそれほど裕福ではなくても一所懸命勉強すれば通えるという意味で本来の国立大学の姿でした.

 ですので,同級生たちは,京大や東大をすべった者,二浪三浪した者,他大学を出てから,あるいは社会人になってから心機一転して医師を目指した者,とツワモノ揃いで,しかも西日本を中心に全国津々浦々から来ていましたし,東京の大学のように決して華やかでお洒落な大学生活ではありませんでしたが,かけがえのない貴重な日々を過ごせました.
 私も生まれて初めて親元から離れたことで,大いに独立心が育まれました.若気の至りで羽目を外してしまい,今から思うと赤面してしまうようなことも多々ありましたが,何よりも当時は今の世の中のようにギスギスしておらず皆おおらかでしたし,全ていい思い出として昇華されています.

 大学の同窓会の1週間後には毎年行っている恒例の六甲学院の同窓会が新大阪であり今年も出席,もうメンバーの大半は固定しているのですが,それでも卒業以来初めて出席した同級生たちもいて,二次会,三次会にも繰り出して盛り上がりました.

 大学卒業後40年以上も経過してしまいましたが,多感な時代を過ごした中学,高校,大学時代の経験は,私のDNAにしっかり刻まれています.

 同窓会というのは,誰しもが参加したいわけではないと思いますし,特にいい思い出がない人はなおさらで,むしろ記憶から消したいくらいの人もいるでしよう.

 参加者も,押しなべて人生の「成功者」や幸せな家庭を築けた者(今風にいえば、リア充というやつでしょうか)などか多いような印象ですので,どの同窓会もだいたいコアなメンバーは固定してしまっています.

 それに学生時代には自分と付き合いのなかった同窓生たちも来ているわけで,そういう人たちと今さら馴染めないという人も多いかもしれません.

 それでも,何十年もの月日は,同窓という共通語だけでむしろそんなギャップを埋めてくれますし,百人百様の生き様の話を聞いていると,勉強になりますし,楽しくもあります.

 それに,同窓生の中には,この年齢ゆえに大病を患って闘病生活を送った者,奥さんが病気になり介護をしている者など苦労人もいて,彼等はそんな中でも皆と会うことで明るい気持ちになれるのだと言っていました.

 多忙な日常診療等で飛ぶように過ぎて行く毎日ではありますが,同窓会は私にとって心のスパイスになっていますし,改めて人との縁を感じたり,自分の今後の人生についてのヒントも得られるいい機会になっています.


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Source: Dr.OHKADO’s Blog

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