一つ前の記事で,中国から訪問した無症状者がドイツ国内でコロナウイルスを感染させ,さらにそこから二次感染が発生した事例を紹介しましたが,
この感染源となった中国人女性の行動について,本人からの聞き取り内容が 症例報告の補遺として掲載されています.
2020年2月5日,著者らによる 本人への電話聞き取り調査結果
2020年1月19日(日)
- 01:35AM(現地時間) 上海空港を離陸
- 同日06:30AM(現地時間) ミュンヘン空港到着(直行便)
- 機内で,自分の真後ろの列にいる人が咳き込んでいることに気づいてはいた.
2020年1月20日(月)
- 会議初日,午前中に Webex会議に参加. 午後には複数の会議に出席した.
- この日は終日 いかなる症状もなかった.
- ところが同日深夜になって,わずかに体が暖かい感じがしたが熱があるというほどではなかった. 中国で「999」という名前で販売されている薬を服用.この薬はアセトアミノフェンを含むものであるらしい.
- 彼女によれば,「翌日は 集中が必要な会議やWorkShopが予定されていたので,予防的処置のつもりだった」
- ドイツ滞在中に服用したのは,この薬を一回だけである.
2020年1月21日(火)
- 午後3時頃,かなり疲労を感じたが,この時間は母国の午後10:00にあたるので,時差のせいだろうと思った.
- ただ 胸部の筋肉や骨に,痛点のある軽い痛みを感じた.
- この時点では前日の体が暖かい感じはなく,他にも症状はなかった.
2020年1月22日(水)
- 午後6時まで,終日会議に出席.
- 朝 薄手のビジネススーツに着替えるとき,わずかに寒気を感じた.
- しかし ショールをはおるとその寒気はなくなった.
- 同日 午後10:20,ミュンヘンを離陸する帰国便に搭乗.
2020年1月23日(木)
- 午後4:00(現地時間)上海に到着. 疲れてはいたが,それ以外は症状なし.
- 同日夜に異常を感知.深夜になって熱を測ったところ,約38℃あり,同時に胸部の痛みも感じた.
- 「この時はじめて自分は病気ではないかと思った」
2020年1月24日(金)
- 自分の父親の薬を受け取るため病院にいくなど,終日多忙.
- 夕方の体温は38.7℃
2020年1月25日(土)
- 病院に行き,入院
2020年1月26日(日)
- ときどき乾いた咳が出るようになった.
2020年1月27日(月)
- 他の病院に転院
2020年1月28日(火)
- 咳が痰を伴うようになった.
- この咳は以後3日間にわたって続いた後 治まった.
2020年2月5日(水)
- 本インタビューに応じた. この日現在も入院中.
感想
以下は文献内容ではなく,しらねのぞるばの感想です.
感染源となった中国人女性は,ドイツとのビジネス会議に出席するほどなので,明晰な人なのでしょう.本人の記憶する行動の記録は,客観的 かつ詳細な点まで述べており,冷静さをうかがわせます.
また,「あの時に感染したのだ」と自覚できる珍しい例です.上海からドイツまで14時間. 後ろに座った人の咳から感染したのは間違いないでしょう.
この報告で非常に参考になるのは,潜伏期間中は 本当に何も症状が出ないのだ,ということです. 本人の述べているわずかな変化は,後になって「そういえば あの時…」という程度のもので,日常生活なら気にも留めないレベルです. にもかかわらず,ドイツ訪問中に商談を交わしたドイツ人2人(患者1,2;前回記事参照)に感染させ,そこからさらに2人(患者3,4)に二次感染が起こっています.
[14時間もの旅客機フライト], そして [終日 会議室での対面会話],このケースでの感染発生はこの条件だと思います.感染者も被感染者も 年齢は公表されていません(*)が,現役ビジネスマンということから高齢者ではなさそうです.とすれば,東京の屋形船でのケースも併せて考えると,このウイルスに感染するのは;
(*)「患者1」は33歳.他は不明.
密閉空間 + 長時間 + 接近
この3条件がそろうと 確率が高くなるようです.
Source: しらねのぞるばの暴言ブログ
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