『母へ――』

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 『母へ――』

  こうしてあなたに手紙を書くのは、
  これで2度目でしょうか。

  1度目は確か、小学生の低学年。

  『お母さんへ』――。

  そんな題目で、
  授業で書かされた記憶が微かに残っています。

  今の時代、
  70代半ばで亡くなるのは、まだ少し早い。

  きっとあなた自身も、
  “日本人女性の平均寿命”が目標だったでしょう。

  昔から、
  「父より長生きするんだ」と、言っていましたね。
  「父が亡くなったら、一人の人生を謳歌するのだ」と。

  それは、冗談のような本音でした。

  私もあなたがこんなに早くに逝くとは
  思ってはいませんでした。

  それも、“がん”でなんて。

  私は、正直、
  今でもあなたのことを許せているのかわかりません。

  幼い頃から受けていた暴言、そして、暴力...。

  親であれば、
  子どもに手を上げるのは当たり前だと思っていました、

  でも、それは違った。

  あなたの死が、そんな私の心の傷を
  少しずつ変えているのは確かなのかもしれません。

  私は、結婚をして子どもを産んだら、

  「自分の子どもには、
   私のような思いは絶対にさせない」と、
  小さな頃からずーっと思ってきました。

  でも、子どもが産めなくなってしまった・・・・・・。

  私は乳がんの治療で、
  子どもを持てなかった。

  あなたにも、孫を抱かせてあげられなかった・・・・・・。

  どこまで親不孝な娘なのでしょう。

  そして私自身が親になれなかった分、
  あなたの気持ちが・・・母親の気持ちが
  一生わからないままなのかもしれません。

  『虐待を受けて育った娘は、
   自分の子どもにも同じことをする』

  そう聞いたことがあります。

  それを聞いたとき、
  とってもわかるような気持ちがしました。

  でもその気持ちの裏で、
  「私は絶対に、自分の子どもには、
   私と同じ気持ちは味わわせたくない」と強く思っていた。

  ずっと心に持っていた痛み・・・。

  身体の傷は癒えても、
  心の傷は癒えることはない。

  でも、私は紛れもなく、あなたの娘。

  可愛がってくれたことも、私は憶えている。

  そう、私はあなたの娘なのです。

  本当は、もっともっと甘えたかった。

  「お母さん」と言って抱きつきたかった。

  優しく抱きしめてもらいたかった。

  いつか私も、そっちの世界へ行くでしょう。

  そうしたら、あなたに会えるのでしょうか。

  なにがあっても、母は母。

  娘は娘なのだと思います。

  あなたが亡くなって5年が経ち、
  ようやく少し、ぐちゃぐちゃに結ばれた糸が
  ほどけてきたように感じます。

  今日、久し振りにあなたに会って、
  そんな気がしました。

今日は母の5度目の命日

2020/07/08 命日

そのうち私は、
母の年齢を超えるのだろうか――

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Source: りかこの乳がん体験記

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