磁気記録メディア
世の中 すっかりデジタル化してしまいました.
かつては 録音といえばカセットテープ,
録画と言えばビデオテープが必須でしたが,
今や 音楽は スマホの半導体メモリ,録画はビデオレコーダーのハードディスクに入れる人がほとんどでしょう.
そういえば,プカ様が愛用されたフロッピーディスクも,まずみかけることはなくなりました.
それは ヒステリシス
ビデオテープやハードディスクの円盤の表面には,磁性体(フェライトなど)が塗布してあり,これをコイルから発生させた【磁界】で,磁極の向きを『書き込んで』いきます. 書き込んだ後には 小さな磁石が残るので,この磁石の向きを読み取ることで『読み取る』ことができます.
この時,せっかく書き込んだ磁石の強さ【磁束密度】が弱かったり,時間が経つと消えてしまったりしては 記録媒体としては使えません.
したがって,テープに塗布される磁性体には,磁界に晒されると磁石になり,しかも磁界がなくなっても磁石の性質が保持される(=残留磁化)『硬磁性体』材料が使われます.
しかし,もしも一旦書き込んだら永久に変わらないとしたら,今度は消去や書き換えができませんから,ある程度の強さの逆方向の磁界が来ると,向きが反転する性質の材料が選ばれています.
そこで,磁界の強さを横軸,書き込まれた磁石の強さを縦軸にとると,
磁界の強さがH0からH+1あたりまでの間では何も起こりませんが,磁界がH+2の強さになると,突然バタンと(音は出ませんが),BNの極性を持つ磁石になります.この磁石は,外からの磁界がH0に戻っても,つまり外部からの磁界がなくなってもそのままです[残留磁化]. これで映像や音声の信号が『記録』されたわけです.この磁石の向きを再生コイルで読み取れば,映像や音楽が流れます.
書き換えるときには,今度は逆方向の磁界をかけます. やはり H-1あたりまでは何も起こらず,磁界がH-2の強さになると,突然磁石の向きは反転してBSになります.
ということは,磁界が H-1からH+1の間の強度の時には,この磁石は N 又は S の2つの状態の両方がありえることになります.そして,どちらの状態なのかは,それまでの履歴をみないとわかりません.直前に H+2の磁界に晒されたのならNでしょうし, H-2を経験していたのなら Sでしょう.
このように 現在の状態が 過去の影響で決定される現象は ヒステリシス(= Hysteresis;履歴現象)と呼ばれます.ヒステリーではありません.
この様子は,前回の記事URLで,棒の向きを切り替えるには ある程度の力が必要だった例と同じです.
つまり状態Aから状態Bに,又はその逆 BからAに状態がスムーズに変化できず抵抗が働く系,すなわち活性化エネルギーが必要な系においては,ヒステリシス現象がみられます.
[3]に続く
Source: しらねのぞるばの暴言ブログ
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