前回まで
- 膵臓β細胞が,血糖値の上昇に対応してインスリンを分泌している状態,また 血糖値の低下に対応してインスリン分泌を止めている状態,この2つの状態をスムーズに切り替えるのを妨げる何等かの『敷居』=活性化エネルギーが存在するのではないか
- 磁気記録メディアに使われている磁性体は,外部からの磁界が強まっても,その磁化が弱いうちはまったく応答せず,一定強度になると,突然磁化が反転するので,ヒステリシス曲線を描く
というのがここまでの話でした. この二つを結びつけてみます.
ここで 話は やっとインスリン分泌に戻ります.
理想の膵臓
教科書には
- 膵臓β細胞は,血糖値が正常範囲にある時は,ごく微量のインスリンを分泌しているが,
- 血糖値が上昇してくると,それに応じてインスリン分泌を増加させる.
- 血糖値が下がり始めれば,やはりそれに対応してインスリン分泌を減少させる.
とあります.
そこで,横軸に ある時点での血糖値,縦軸にその時点でのインスリン分泌量が測定されたとします.
インスリンは血糖値が高くなると分泌され,血糖値が下がると分泌が減る,つまりその時々の血糖値に応じたインスリン量になるはずですから,理想的には このグラフはこうなるはずです.
もちろん,膵臓β細胞は無限にインスリンを分泌できるわけではないので,どこかで頭打ちになります. しかもその頭打ちレベルは人それぞれでしょう.また どれくらい血糖値が高いと どれくらいのインスリンを分泌するかも 人それぞれでしょう.
しかし,膵臓が理想的であれば,血糖値が同じならインスリン分泌量も常に同じであるはずです.
ここでは赤点線のように 血糖値が140の時には 必ず70μuのインスリンを分泌するとしています.
では糖負荷試験で 正常な人のデータをは,このグラフのようになっているのでしょうか?
それを 納先生のホームページに掲載されている5時間の糖負荷試験データで検証してみましょう.
みごとに正常です
納先生のHPデータで,もっとも『美しい』糖負荷試験の形を示すのは No.14の30歳台の男性です.
糖負荷試験の最初の15・30分で即座にインスリンが出て,しかもこれが最大ピーク値です.血糖値は上がりますが,せいぜい135mg/dlにしかならず,以後 少し波打つものの緩やかに低下して,120分では98と,憎らしいことに開始前の血糖値とぴったり同じです. そしてそこまで血糖値が下がれば,もはやインスリンの出番はないので,180分以降は 空腹時を下回る分泌量になっています.
糖負荷試験の模範例
と崇めていいでしょう.
このデータを,横軸=血糖値, 縦軸=インスリンでプロットするとこうなります.
0分から始まって,15/30分で頂点に達した後は,ほぼ直線状に元の出発点に戻っています(途中120~180分ですこし足踏みしていますが).
このNo.14の方は,血糖値の上昇/下降に応じて,すいすいとインスリンを出したり引っ込めたりできるのでしょう.ほぼ理通りのグラフになっていると確かめられました.つまり,同じような血糖値の時には,インスリン分泌もやはり同じような値になっているのです.
[4]に続く
Source: しらねのぞるばの暴言ブログ
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