ミステリーベスト10のネタバレ感想第二回。
▼ミステリーベスト10はこちら▼
前置きやミステリーへの思いは前回(>>皮膚科医のミステリー遍歴)書いたので、早速おすすめのミステリー小説ベスト10を紹介…
今回は第二位の綾辻行人「Another」。
個人的には綾辻行人のベストは「Another」だと思っている。
学校の怪談をモチーフにした学園ホラー小説。
綾辻行人の作品だけど本格ミステリーではなくてライトノベル的。
あらすじ
夜見山北中学の三年三組に転校してきた榊原恒一。
恒一はクラスメイトの中に病院で偶然鉢合わせした眼帯の少女、見崎鳴を見つける。しかし何故かクラスメイト達は彼女を“いないもの”として扱っていた。
この小説には前半と後半で2つの謎がある。
- 誰からも見えないクラスメイト見崎鳴の謎
- 3年3組の呪いを解く方法
しかしあまり謎解きに重きを置いておらず、ストーリー重視の小説になっている。
その中にミステリー的な企みが隠されているところが大きな魅力である。
以下ネタバレ注意
ネタバレなしの感想>>【100冊から選んだ最高傑作】絶対読むべきおすすめミステリーランキング10
「Anothe」のネタバレ解説
1. 見崎鳴の謎
誰からも見えないクラスメイト見崎鳴の謎には論理的な解決が用意されている。
前半の最後で「3年3組のクラスの一員とその家族が死んでいく」という呪いが明かされる。
呪いを解く方法はクラスの一人を存在しないものとして、みんなで無視するということ。
そのために見崎鳴はいないものとして扱われていた。
綾辻先生の謎の出し方と伏線の張り方が絶妙で、高いリーダビリティがある。
無視する方法では呪いは解けず、見崎鳴と協力して呪いを解く別の方法を探す後半へ進んでいく。
2. 3年3組の呪いの謎
後半では呪いのルールが少しずつ明らかになってくる。
3年3組の呪いのルール
- クラスに一人死者が紛れ込んでいる
- 死者を殺せば呪いは解ける
- しかし記憶が改変されるため死者が誰かを知ることはできない
ストーリー展開は呪いの謎を探る場面では冒険小説であったり、殺人鬼が登場する場面ではパニックホラーだったりする。
そして終盤唐突に「死者は玲子さんだった」と明かされたときは、まったく意味がわからなかった。
玲子さんは3年3組と関係ないじゃん!と。
実は叙述トリックが隠されていて「三神先生=玲子さん」だったというオチ。
読み直してみるとライトノベル的なストーリーの中に周到に伏線が張り巡らされている。
登場人物たちが死者を知る方法はないが、読んでいる読者には死者が誰かを知るためのヒントがたくさん与えられている。
そんなミステリー要素が隠されていたなんて想像もしていなかっただけに不意打ちを受けて、本当に驚かされた。
これがミステリーの醍醐味。
まとめ
綾辻行人のミステリーの中では「十字館の殺人」並みの衝撃を味わわせてくれた傑作。
【関連】皮膚科医のミステリー遍歴 江戸川乱歩から綾辻行人まで
ミステリーベスト10はなるべく叙述モノは避けるというルールを設定しているが、「Another」は外せなかった。
「なるべく避ける」だからアンフェアではないはず。
▼こちらのミステリーもおすすめ▼
Source: 皮膚科医の日常と趣味とキャリア
コメント