いまさら銀河英雄伝説のアニメをみている。
銀河英雄伝説(銀英伝)は1982年から1987年にかけて刊行されたSF小説で、アニメ化もされている作品である。
最近リメイクアニメが制作されているが、今回見たのは旧版アニメ(全110話)。
超有名な作品で、もはや一般教養の一つにすらなっている印象だが、今までみたことがなかったのだ。
これはかなり面白い。
戦争だけでなく、政治劇もふんだんに描かれていて、ガンダムよりもリアルなSF作品である。
前回の記事では銀英伝の基礎知識をまとめた。
いまさら銀河英雄伝説のアニメをみている。
銀河英雄伝説(銀英伝)は1982年から1987年にかけて刊行されたSF小説で、アニメ化もされている作品である。
最近リメイクアニメが制作されているが、今回見たのは…
今回は数ある戦いの中から特に印象深いものを解説したい。
①宇宙暦796年帝国領侵攻(アムリッツァ会戦)
戦いの背景と動向
ヤンの奇策によって、重要な拠点であるイゼルローン要塞の奪取に成功した宇宙惑星同盟。
この戦果に同盟市民は興奮し、更なる戦果を求める声も上がっていた。
しかし度重なる戦争によって同盟の経済は疲弊している。
ここで同盟は経済を立て直すため、帝国と講和条約を結ぶチャンスを得たのである。
ところが内閣は、社会システムの停滞や汚職の発覚により支持率を大きく下げていた。
しかも統一選挙が目前に迫っている。
そこで政府は票集めのために、帝国領本土への全面侵攻作戦を提案する。
軍部は作戦に反対したものの、文民統制の宇宙惑星同盟では政府からの命令には従わざるを得ず、作戦は実行に移されてしまったのである。
この帝国領侵攻は、民主政治の問題点を浮き彫りにしたエピソードだった。
空前絶後の大規模作戦は予想通り自由惑星同盟の完敗に終わる。
同盟軍は戦力の8割を失って弱体化し、のちの同盟滅亡の原因の一つとなった。
大衆に迎合した扇動政治家が幅をきかせ、民主政治が腐敗する。
そして人の命がかかった戦争さえも選挙のための道具として利用される。
古代ギリシャの時代から繰り返されている衆愚政治の姿そのものである。
独裁政治 vs 民主政治
この戦いは「独裁政治vs民主政治」という銀英伝のメインテーマを浮き彫りにしている。
独裁政治と民主政治はどちらが優れているのだろうか。
一般的に民主政治が理想的とされている。
しかし作中で語られるように、優れたリーダーによる独裁政治は、愚かなリーダーによる民主政治に勝る場合があるのである。
実際に自由惑星同盟は失策を重ねたあげく、ラインハルト率いる銀河帝国に滅ぼされてしまう。
これを現実の世界情勢と対比させるとどうなるだろうか。
第二次世界大戦、冷戦の結果から、現在は民主政治こそが最も優れているということになっている。
しかし、これまでの歴史は独裁政治と民主政治のシーソーゲームである。
腐敗した独裁政治を民衆が打倒し民主政治が成立する。
その後民主政治が腐敗し、民衆の支持のもと独裁政治が成立する。
歴史はその繰り返しなのだ。
→独裁政治→民主政治→独裁政治→民主政治→
今の世界もこのような大きな流れの中にあると言える。
昨今の中国の台頭や、コロナ対策での迅速な動きは一党独裁の強さを感じさせられる。
一方で民主主義の大国では扇動政治家が支持を集め、多くの人がウイルスの犠牲になってしまっている。
民主政治の勝利は一時的なもの。
世の中は民主政治後退のステージに入りつつあるのかもしれない。
アムリッツァ会戦は、そんな考察もできる銀英伝の奥深さを感じさせられるエピソードである。
②宇宙暦798年ラグナロック作戦(バーミリオン会戦)
戦いの背景と動向
銀英伝では、戦略と戦術を明確に区別することの重要性が語られている。
戦略的敗北を戦術的勝利で覆すことは不可能。
それが一番わかりやすく描かれているのがラグナロック作戦である。
宇宙惑星同盟はアムリッツァ会戦で戦力のほとんどを失ったが、イゼルローン要塞を抑えているため、帝国からの侵攻は防げていた。
そこで帝国軍は中立地帯であるフェザーン回廊から全面攻勢をかけたのである。
これによって、「唯一の交通路」というイゼルローン要塞の戦略的優位性は失われてしまった。
同盟軍は敗色濃厚である。
唯一、戦力的に期待できるのはイゼルローン要塞。
圧倒的火力を誇るこの要塞に立てこもっていれば、目の前の戦闘では勝利できるだろう。
しかし局地的勝利を繰り返しても、戦局に影響を及ぼすことはできない。
唯一の交通路という戦略的優位性を失った今、戦術的勝利で劣勢を挽回することはできないのである。
戦略は戦術に勝る。
その原則に則るヤンはイゼルローン要塞を放棄することを決定する。
しかし戦術で形勢を逆転できる可能性が一つだけあった。
それはラインハルトとの一対一の艦隊戦に持ち込み勝利すること。
後継ぎが不在の銀河帝国は、ラインハルトを失えば瓦解するのである。
戦術で戦略的不利を逆転できるか?
ゲリラ戦で帝国艦隊を各個撃破し、ラインハルトの本隊を引きずり出して倒す。それがヤンの作戦だった。
神出鬼没のヤン艦隊に翻弄される帝国軍。
帝国軍の中では、ヤンを無視して首都を制圧すべきという声が上がる。
しかしラインハルトはヤンとの完全決着を望んだ。
神出鬼没のヤン艦隊を確実に倒すには、ラインハルト自身が囮になって、ヤンをおびき出すしかない。
そしてバーミリオン星域で、二人の最終決戦が始まったのであった。
銀英伝で一番熱い戦いがバーミリオン会戦である。
激しい戦いの末、ヤンの勝利が目前に迫る。
しかしラインハルトの戦艦への攻撃を行おうとする瞬間、同盟政府からの停戦命令が発動される。
首都を包囲された政府が自分たちの身を守るため、勝利を目前にしてあっさりと降伏してしまったのである。
帝国軍の戦略的勝利。
ヤンは戦術的勝利を重ねたにもかかわらず、敗北してしまったのだった。
天才ヤンをもってしても戦術で戦略を挽回することはできなかった。
この戦術と戦略のせめぎ合い。
仕事においても、戦術と戦略の違いは常に意識しておく必要がある。そんな教訓が得られるエピソードだった。
地方の総合病院に勤務していると、軽症でも入院を希望する患者が多い。
そこで誰しもこんな経験をしたことがあるんじゃないかと思う。
自宅で自立して生活していた高齢者が入院になる。
ところが入院後にせん妄を起こし…
まとめ
今回は銀英伝の2つの戦いを解説した。
次回は登場人物についての考察をする予定である。
銀河の歴史がまた1ページ・・。
つづく
Source: 皮膚科医の日常と趣味とキャリア
コメント