ミステリーベスト10のネタバレ感想、第三弾。
今回は有栖川有栖の「孤島パズル」。
学生アリスシリーズの2作目に当たる。
学生アリスシリーズ
- 月光ゲーム
- 孤島パズル
- 双頭の悪魔
- 女王国の城
有栖川有栖は和製エラリー・クイーンとも呼ばれ、クイーンの影響を強く受けているそうだ。
クイーンのミステリーの特徴は、読者への挑戦状と論理的解決である。
以前から「読者への挑戦」を含む作品もあった。せやが、クイーンはこれを一番効果的に使こうたんや。
単に犯人を当てるだけでは勝ったとは言えへん。エラリイと同じように与えられた手掛かりから論理的に推理してみなはれと、こうやったんや。
論理的な解決というのがポイントで、どんでん返しや複雑なトリックは存在しない。
三段論法(A=B,B=CならばA=C)で犯人を導き出すことができる。
それまでの探偵小説は、意外な犯人というところがポイントやったんや。今でもそういう作品を書くのが大勢おる。
せやけどクイーンはあたりまえの人物、指摘されて当然の人物が犯人ですよ、ちゅうたんや。
あっと驚くトリックやどんでん返しがミステリーの楽しみなだけに、それらがないミステリーなんか面白いのかと疑問だった。
でも読んでみるとこれが面白いのだ。
「孤島パズル」のあらすじ
あらすじ
英都大学推理研のアリス、マリア、江川は、時価5億円相当のダイヤモンドが隠されているという嘉敷島を訪れた。
宝探しを始めた三人だったが、嵐の夜に滞在客がライフルで殺されるという事件が起こる。
1作目の「月光ゲーム」はストーリーが比較的単調だったが、今作は宝探しという要素が入ったおかげでリーダビリティが上がっている。
宝探しと犯人捜しの話が同時に進んでいく。
犯人探しのヒントは「地図はもともと魚楽荘にあった」ことと「なぜ落ちていた地図に自転車のタイヤの跡がついていたのか」ということ。
以下ネタバレ注意
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「孤島パズル」のネタバレ解説・感想
「進化するパズル」の謎は一次元⇒二次元と地図を進化させていくこと。
地図の点を結び、線⇒立体と組み立てていくことで宝の場所がわかる。(一次元⇒二次元⇒三次元)
さらに時間経過で潮が引いて宝の隠し場所が現れるという仕掛け。(三次元⇒四次元)
この展開も面白いが、本当の面白さは当然犯人捜しの方である。
解決の糸口はすべて提示されている。意外な犯人やトリックは存在せず、三段論法で論理的に犯人を導き出すことができる。
ポイントは2つ
- 落ちていた地図に自転車のタイヤの跡がついていた
- 地図はもともと魚楽荘にあった
1. タイヤの跡と地図の場所
地図にタイヤの跡がついている。それはつまり犯人が魚楽荘と望楼荘の間を往復したということ。
往復の方法は2パターン。
- 魚楽荘→望楼荘→魚楽荘
- 望楼荘→魚楽荘→望楼荘
▼パターン①▼
魚楽荘→望楼荘→魚楽荘
▼パターン②▼
望楼荘→魚楽荘→望楼荘
そして地図はもともと魚楽荘にあった。
ということは①のパターンだということがわかる。
すると望楼荘→魚楽荘の移動には自転車以外の手段が必要になる。
2. 魚楽荘への移動手段
ボートは転覆していたため使えない。
となると魚楽荘へ行くには泳ぐしかない。
すると泳げない和人は、犯人ではないことがわかる。
さらに泳いで魚楽荘まで行ったということは、ライフルはあらかじめ魚楽荘に隠していた。
つまりライフルを魚楽荘へ持っていくことができた人物が犯人となる。
定期的に魚楽荘へ食料を運んでいた礼子が犯人。
まとめ
礼子が怪しいというのは見え見えなんだけど、論理的に解決することはできなかった。
かなり悔しい。
単純な理論なんだけど、わかりそうでわからない絶妙な難易度。
大型トリックのミステリーが多い中、この正統派パズルミステリーの価値は高いと思う。
漫画版も出ているらしいので、機会があれば読んでみたい。
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Source: 皮膚科医の日常と趣味とキャリア
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