“乳がん”は、自分でみつけることができる、
数少ないがん
「たまたま触った胸に、
硬いしこりのようなものがあった」
「セルフチェックでみつけた」
など、検診以外でしこりに気づくことも多い
私もみつけたのは“たまたま”だった
まだ30代
“がん”なんて考えたこともなかった
今でこそ、
『乳がん検診を――』
そんな呼びかけも増えているが、
当時は耳にしたこともなければ、
目にしたこともなかった
いや、
今、こうして自分が乳がんになったからこそ、
検診の呼びかけに
気づくようになったのかもしれない
しこりをみつけたとき、
真っ先に頭に過ぎったのは、
当然のことながら、“乳がん”
『しこり=乳がん』
だと思っていた
良性の腫瘍もあるらしい
まさに、
私が診断された、それである
その日は眠れぬ夜を過ごすことになる
「しこりがなくなっていますように」
と、一晩中、乳房に触れては、
しこりが消えていることを祈った
「触っていれば、
そのうち砕けてなくなるかもしれない」
そんな馬鹿なことを考えたりもした
「いや、触っているうちに大きくなるかも」
と、恐怖にも襲われた
一晩で何十回、しこりを確認しただろう
触るたび、
「やっぱりある」
「まだある」
「“おっぱいに何か入っている”ということは、
このままにしておいてはいけない?
取り出さなければならない?
でもこれが、“がん”だったら?」――
そう、必ず取り出さなければならない
“乳がん”だとしたら、
放置していれば、進行していく
自然に消えることはないのだ
そしてそれは、
少しでも早くに取り出さなければならないもの
“治療をしなければならない”ということ
躊躇した
病院に行って検査を受けて...
「乳がんと言われたら...」
それが怖くて、前に進めなかった
乳がんだとしたら、生活は一変するのだ
今のこの生活ができなくなってしまうのだ
「このまま、なかったことにしたい」
と、
しこりがあることを見てみぬふりをしようと思った
が、時間が経てば経つほど、
残された命が短くなってゆくということだ
「私はどうすれば...」
時間を戻すこともできない
しこりをなかったことにもできない
「このまま病院に行かなければ、
きっとズルズルとそのままにしてしまいそうだ」
そして翌日、私はクリニックを受診する
私は運がいいのかもしれない
それは、しこりの再受診*をしたのは、
リストラをされ(もう“死後”である)、
病院に行く時間があったから
*)・・・しこりをみつけた当初、
「良性腫瘍だから特に治療もないし、
そのままにしておいていいよ」と
言われていた
が、5年後、
3倍くらいの大きさになったため、
簡単な気持ちで切除しに
同じクリニックを受診したのだ
あのまま仕事を続けていたら、
きっと数年、病院には行かなかっただろう、
行けなかっただろう
約5年放置していたがんを、
さらに数年放置していたかもしれない
そう思うと、
今、こうして生きていられることは
運命だったのだろうか
いや、本当に“運命”があるとしたら、
最初にしこりをみつけた段階で、
がんを見抜いてほしかった
いや、5年放置したことも、
きっと、なにか意味があるのかもしれない
...と、思ってみよう――
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Source: りかこの乳がん体験記
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