自分には昔からモノづくりに対する憧れがあった。
ルーチンワーカーの仕事についてから、ますますクリエイターへの関心が強くなっているような気がする。
制作の裏話も大好きで、これまでいろいろなクリエイターの本を読んできた。
創作についての本だけでなく、いかに作品を売るかというマーケティングについて書かれた本も興味深い。
そこでこれまで読んで面白かったクリエイターの本を、アーティスト編(創作)とプロデューサー編(マーケティング)の2つに分けてまとめたいと思う。
今回はアーティスト編。
1.職業としての小説家
村上春樹は、自分の小説について解説しないという信念をもっているそうだ。
僕には、自分が書く小説についてあまり説明をしたくないという思いが、わりに強くある。
自作について語ると、どうしても言い訳をしたり、自慢したり、自己弁護をしたりしてしまいがちになる。
「職業としての小説家」は、そんな彼が創作の秘密を公開した超貴重な書籍である。
村上春樹の文章は軽くて読みやすい。
それは意識して書かれていて、音楽を演奏しているような、動きの良い文体を作ろうとしているから。
しかしその文体が文学的ではないと言われ、ずっと批判されてきたそうだ。
本当に新しいものは、最初は認められないことが多い。
批判の中で村上春樹が達した「全員を満足させられないなら自分が楽しむしかない」という考えは、クリエイターとって最も大切なものなのかもしれない。
2.ガンダムの現場から
ファーストガンダムの詳細な設定資料と、当時の富野由悠季監督のインタビューをまとめたお宝資料。
今でこそロボットアニメのプロトタイプとしての地位を確立しているガンダムだが、当時は前衛中の前衛、カルトなアニメだったようだ。
富野監督は「おもちゃのコマーシャルのためのアニメ」という枠の中で、スポンサーに配慮しながら濃いドラマを作るという取り組みを行った。
この本気さが大ヒットを生み、カルトな作品をド真ん中の本流に変えてしまったのだ。
確かにファーストガンダムには、表向きは子供向けなのに内容は大人向けという歪さがある。だがその歪さが魅力になっていると思う。
優れた作品は制約から生まれる。モノづくりを志すなら一読の価値がある本である。
3.荒木飛呂彦の漫画術
ジョジョの荒木先生がマンガを描くためのノウハウを公開した貴重な新書。
キャラクターの作り方、ストーリーの組み立て方、絵の描き方など一つ一つ丁寧に解説されている。
ジョジョといえば個性的なキャラクターが特徴だが、その裏には細かいキャラ設定があるようだ。
好きな食べ物、音楽、色など詳細な設定を埋めていく作業から一人ひとりのキャラクターが生まれるのだという。
しかしその設定が作中に描かれることはない。
裏設定が豊かな世界観を形成する。見えない部分に手を抜かないことが名作の条件なのだろう。
徹底的に世界観を作り込んでいく。これはどんな創作にも役立つノウハウかもしれない。
4.思考の整理学
英文学者である外山滋比古先生の学術エッセイ。
タイトルは思考の整理学だが、どちらかというと論文や評論などのアイデア発想法について書かれている。
「ハウツーものにならないようにした」と言っているように、箇条書きではなくエッセイ風なので読み物としても楽しめる。
その中でも特に秀逸なのは、アイデアを生み出すためには「寝かせる時間」が重要という項目。
一つの問題をひたすらに考え抜いても答えは出てこず、一旦寝かせておいて別の問題に取り組んでいると、ふとした時に答えが見つかることがある。
これはビール(=小麦+酵母+発酵)に例えられている。
小麦(元のアイデア)だけではビールはできず、酵母(別のアイデア)と発酵(寝かせる時間)が必要だということである。
他にも役立ちそうなノウハウが満載で、コンテンツ作りをする人は読んでおくべき良書。
5.罪と音楽
90年代のスーパースター小室哲哉の栄光と挫折の自伝。
TKの成功を支えたのは優れた分析力にあるようだ。彼は売れているバンドを研究してどうやったら「売れる曲」を作れるのかを考えた。
演出も含めて一つの曲という考え方で色々な新しい試みを行って大ブレイクした計算の人なのである。
どんな制作も、既存の優れたものを分析して自分のものにするところから始まる。TKの考える成功の法則は普遍的な内容である。
TKが反省しているのは、わかりやすい売れる曲を作るために日本の音楽を幼稚にしてしまったということ。
しかしAKBなどを見ると、TKの方がまだ音楽性があったと言えるだろう。
6.オリジナリティ
一風変わった飲食店を経営する料理人へのインタビュー集。
変わった経歴の料理人が多いことが特徴である。
エンジニアからフレンチシェフになった人、DJから焼肉店を経営するようになった人、ジャーナリストから日本酒を作るようになった人など。
それがオリジナリティの源泉になっている。
新しいものは、まったく違った分野の経験から生まれるらしい。
しかし彼らも最初から特徴的な店を作ったわけではない。なんの特徴もない店を経営しつつ徐々にオリジナリティを出していった。
そしてその過程で批判を受けるのも共通した特徴である。
そこで万人受けは求めず、さらにターゲットを絞ることが成功のための秘訣になるようだ。
批判されても、尖ったメッセージを出し続けることはコンテンツ作りでも大切なことだと思う。
まとめ
今回はクリエイターの創作に関する本を紹介した。
モノづくりに興味があるのに、芸術センスも文才も想像力もない自分は、こうやってちょこちょこブログを書くことで紛らわすしかない。
歯がゆい思いをしているが、いつかは何かしらの作品を世に出してみたいものである。
次回プロデューサー編(マーケティング)につづく。
▼今回紹介した本▼
Source: 皮膚科医の日常と趣味とキャリア
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