みんな、いなくなってゆく...。

「おばさん亡くなったから、
 今日お通夜だから」――

父からそんな電話がかかってきたのは、
ちょっと遅めの朝

「今日!?」

あまりに唐突さに、
私は驚いて聞き返した

「“亡くなった”という連絡は
 きのう来ていたんだけど、
 昼間バタバタしていて夜遅くなったから、
 電話しなかった」

って...

『いやいや、“夜遅い”って言ったって、
 夜中の1時2時じゃあるまいし、
 今、連絡くれた方がきついよ...』

という心の声が身体中にこだまする

なんでも簡単に考える父

なんでも自分中心の父

ひとの予定なんてお構いなし

それに、“通夜”と言っても
けっこう準備が大変だ

  ○香典袋と表書き・裏書き
  ○香典袋の中身(現金)
  ○袱紗
  ○喪服
  ○黒のパンスト
  ○喪のバッグ
  ○靴
  ○パールのネックレス
  ○パールのピアス
  ○数珠

すべてをクロゼットから引っ張り出し、
夕飯を胃に流し込む

味わっている時間はない

式がはじまる直前に、
なんとか会場に到着だ

うちの親戚、
普段からあまりつきあいがない

おばさんも、
これまで数えるくらいしか会ったことがない

が、お坊さんのお経を聴きながら
おばさんの遺影を眺めていたら、
子どもの頃の記憶が次々と蘇ってきた

いつも笑顔だったおばさん

会うといつも、「りかちゃん」と
優しく声をかけてくれたおばさん

盆や正月に親に連れられ親戚回りをしたとき、
おばさんはいつも、

「ごめんね。うちにジュースなくて...」

と、煎茶を出してくれた

まだ幼かった私は、
それが飲めなかった

「こんなの、りかちゃん食べないでしょ」

と、出してくれたお菓子も、
地味なお茶菓子だった

それが、おばさんとの思い出

どんどんいなくなってゆく親戚

「みんな、そんな年齢か...」

母より、父より、
叔父や叔母より、

私が先に逝くと思っていたのに――

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Source: りかこの乳がん体験記

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