2022年 糖尿病治療は変われるのか[2]

健康法

前回記事で,日本糖尿病学会は 『糖尿病の食事療法は 一律・画一的ではなく,個別化すべきだ』という原則は表明したものの(それ自体は 30年来の方針転換で勇気のいることだったでしょうが),それ以上のこと,つまり 実際の医療現場で『食事療法の個別化』をどう実践していけばいいのか,その具体的なガイダンスを 一切出していないために生じている混乱を紹介しました.

これでは 治療の最前線で医師や管理栄養士は困惑するばかりです.

定点観測

ちょうど1年前,全国から 糖尿病専門医のいる開業医・クリニックを無作為に50箇所選び,そのクリニックのホームページから そこで行われている食事指導・栄養指導の内容を集計してみました.

結果は下の通りで,クリニックで『糖尿病患者に栄養指導を行う』とはあっても,その内容を表示していないクリニックが半分以上でした. そして栄養指導の内容を具体的に書いているクリニックでは『食品交換表に従う』としたところが最大派閥でした.

2021年1月 調査結果

しかし,今や 日本糖尿病学会が『個別化食事療法』という原則を強く打ち出しているのですから,糖尿病専門医(=ほぼすべて糖尿病学会員でしょう)としては,学会のガイドラインに従う義務まではないとしても,何らかの変化があってしかるべきです.

そこで昨年調べた50のクリニックのホームページを再度調べたところ;

変化なし

図にするまでもありません. まったく昨年と同じでした. 昨年『食品交換表に基づいてバランスのとれた栄養食指導を行う』などと書いていたところはそのままでした.

というより,栄養指導に限らず,ホームページの記載事項をいささかでも変更したクリニックは ほとんどありませんでした.

例外は下記2件のみでした.

  • 昨年は クリニック紹介欄にあった『栄養指導』の項目がなくなった
  • 昨年とほぼ同文だが,『日本糖尿病学会の[糖尿病診療ガイドラン 2019]に準拠して栄養指導を行う』と追記した

糖尿病専門医がいる 全国の50のクリニックで,[糖尿病診療ガイドラン 2019]に言及したのは,たった1か所だけでした.

それはそうでしょう. これまで30年近くにわたって,『糖尿病の食事療法は 食品交換表以外ありえないのだ』と厳しく患者を指導してきたのですから,今さら前言を翻せないのです.

学会の打ち出した『糖尿病食事療法の個別化』を早速実行に移したクリニックは,少なくとも 定点観測している50のクリニックには ほぼ見当たりませんでした.

学会方針と実際の治療現場との,この大きな乖離は 2022年にどうなるのでしょうか.どうすべきなのでしょうか.

Source: しらねのぞるばの暴言ブログ

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