新型コロナのパンデミックが始まって2年,ようやくポストコロナの展望が開けてきたかと思った矢先,世界中を震撼させる大事件がおこりました.
ロシアの大統領,プーチンの独断と偏見で火蓋を切られた隣国ウクライナへの電撃的な軍事侵攻,圧倒的な軍事力により首都キエフが陥落占領されるのに3日も要さないと言われていましたが,ことはロシアの思惑とは真逆の方向に進んでいます.
最前線に立つゼレンスキー大統領に率いられたウクライナの国民や兵の士気は,大義なき戦いに借り出されたロシア兵よりも遥かに高く,また軍事や情報戦略も極めて巧みで,3週間以上経過してもロシアの目的は達成されていません.
泥沼化する戦況に剛を煮やして狂人と化したプーチンは,市民への無差別攻撃まで始めてしまいました.ロシア側の被害も相当なものの,ウクライナでは,民間人の犠牲者がどんどん増え,すでに隣国に数百万人もの難民を生み出してしまっています.
この間ロシア国内はもとより世界中から,大虐殺(genocide )とも言えるプーチンのやり方に対する批判が湧き上がり,ウクライナは西側諸国を中心とした世界中の国々から,直接戦争に加担してもらうことは出来ないまでも,武器や資金や情報の供与等あらゆる方法で援助を受ける一方,かたやロシアは大規模な経済制裁や民間企業の撤退,資金凍結など,国家の存続を脅かすほどの影響を受け,あまりにも大きな代償を払わざるを得ない状態になっています.
米国に住んでいた1990年,イラクのクウェート侵攻が起こりました.これも当時のイラクの国内事情に起因した身勝手なものでしたが,米国主導の国連軍が出動してこの試みは失敗に終わりました.
当時の私はまだ世界の歴史を今ほど俯瞰的に見れる知識も人生経験もなく,インターネットもありませんでしたから,テレビや新聞の情報だけで,この軍事侵攻におけるイラク=悪のような固定観念を持ってしまっていました.
そのため同じ研究室にいた米国人の若い医師のエリックが,米国は世界の警察の役割を果たしている,といって正当化したのに単純に賛同してしまいました.
しかしベトナム人の同僚で生化学者のカオさんは,他国は絶対に介入干渉してはならない,と強く主張したのです.その時は身勝手な考えに感じましたが,地域の紛争に他国が直接介入すると結局悲惨な結果になることは,このクウェート侵攻がその後の湾岸戦争につながったことを考えればわかりますし,ベトナム戦争の悲惨な結末を身をもって体験したカオさんだからこその答えだったのだろうと,恥ずかしながら後になって理解できました.
今回も,もしもNATOのメンバーではないウクライナに,EUや米国が自国に直接の被害がないにも関わらず介入すればそれこそ第三次世界大戦,そして最悪の場合核戦争につながる危険性をはらんでおり,それ以外の方法でなんとかウクライナを支援せざるを得ないというのは,心情的には本当に忸怩たる思いではありますが,やむを得ないのかもしれません.
しかし国連の常任理事国で核保有国でもある国が,国際社会になんの不利益ももたらしていない小国を独裁者の野望だけで蹂躙するということは,決して超えてはならない一線を超えてしまったという意味では,言語道断,極悪非道な行為であり,しかも情報統制とプロパガンダにより,まるでナチスのように国民をある意味洗脳している点も含め,ロシアが擁護される点は何ひとつありません.
いったいこの戦争はどのようにして終わるのか?内外の識者が種々論評していますが,誰も確かなことはわかりません.
ウクライナが世界中の支援を受けながら何とかこの忌まわしき戦渦を耐え,内外の圧力に屈して一刻も早くプーチンが停戦に応じるか,政権が転覆したり亡命せざるを得なくなることが理想的でしょうが,残念ながら情勢は厳しそうです.
いずれにせよ,この戦争をきっかけにロシアは世界における地位も経済も尊厳も完膚なきほどに打ちのめされ,そして国連の意義や世界の安全保障体制が問い直されることになることだけは間違いなさそうです.
そしてこの戦争はは我が国にとっても決して他人事ではないのは言うまでもなく,今の平和が未来永劫続くと信じがちな日本人にとって,我が身に置き換えて考える機会とする必要がありそうです.
世界の歴史はずっと弱肉強食の繰り返しであり,大国の論理で動いてきましたし,また独裁的な指導者が権力の中枢に長く居座ると大抵ろくなことはないということ,戦争で苦しむのは結局一般市民たちであるということを歴史が証明しているのに,これほどまでに高度な文明を築き上げた21世紀になっても,人間というのは結局何も学んでおらず愚かなままなのだということをつくづく感じさせられます.
今回もちろん最大の犠牲者はウクライナの一般市民ですが,独裁者の野望が引き起こした厳しい情報統制や経済制裁によって苦しむロシアの一般市民も犠牲者に違いありません.
今回私は微力ながら国連UNHCRを通じて寄付をさせていただきました.少しでもウクライナの方々のお役に立てればという思いです.
戦禍に苦しむウクライナの人々に1日も早く平和な日々が訪れますように.
Source: Dr.OHKADO’s Blog
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