まずは、目の前の痛みを止めてくれ。話はそれからだ。

医療機関

先生、一晩中ね、この人、痛いって、言うん。

先生呼ぼか?言うたら、要らんって。

そやけど、もう見てらんないの。

そういう時が来てるのは、わかってるんよ。

わかってるんやけど、痛いのずーっと我慢してて、

もう私も我慢できんようなったから、電話したん。

もうこの人、天国でもええ言うん。先生お薬何とかして。

 

連休にお出逢いした時は、

奥さん自慢して笑顔だった親父さんが、

歯を食いしばっている。

 

我慢させて悪かったなあ。

お薬持ってきたで。

 

もうアカンわ、先生。痛いの取ってくれなんだら、もうええわ、天国で。

内のやつはよおしてくれるけど、痛ない時は、美人に見えるけど、

痛かったらもうあかんわ。

 

だいぶ我慢して一晩過ごした彼は、

タナカの顔見て、弱々しく話す。

奥さん自慢がかなり低調だ。

 

これ飲んだら、大丈夫やで。

 

ゴクッと飲む。

 

先生、この人な、、あかん、、、涙出る、、ちょっと、、ごめん、、、

その様子を見ていた奥さんはティッシュで顔を隠して、涙声。

部屋の外に出て、ちょっと泣いて戻ってくる。

 

彼のことが大好きな奥さんは、

一晩中、彼と一緒に不安と戦っておられたようだ。

 

 

病気は、やはり厳しい。

突然に、痛みや苦しみに襲われる。

普通に暮らしてる時は、みんな普通に、

愛を語り合える。

 

医療者が知らないだけで、

夫婦や家族や友達には、愛がある。

 

でも、でも、痛みや苦しみが、突然にやってくる。

そんな時に、動くのが僕たちの仕事だ。

 

目の前の痛みに、応じる。

こんなにシンプルなことが、

できていない今のこの世界。

 

これができなくなったら、僕はこの仕事を辞める時。

 

お薬がよく効いて、

笑顔になった親父さんを見て、

奥さんが帰りにおっしゃった。

 

先生、もうね、わかってるんです、長くないことは。

でもね、こうして笑って寝てくれてたらね、それでいいんです。

今日、彼のことが大好きな長男に、連絡しときます。

ありがとうございました。もう大丈夫です。

 

医療者ができることは、限られている。

しかし、それを粛々とできなければ、

プロとはいえない。肝に銘じよう。

 

今日は、ちょっとムキになっていたかも((笑))

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Source: 兵庫県三田市の在宅療養支援診療所「たなかホームケアクリニック」

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